ナロー、ビックバンパーを エレクトリックエアコンキットで快適に乗る

Photography:Junichi OKUMURA

オートモービルカウンシルなどのイベント会場で、ひときわ目をひく1台のクラシックポルシェがあった。
 
1970年911Tをベースに、グラマラスなRSRルックのボディをまとい、3.3リッターのターボエンジンをインストール。インテリアのコーディネイトのセンスの良さ、まるで欧米のカスタムショーで展示されているショーカーのような非常に高い完成度だ。どの会場でも抜群の存在感を放っていたので、イベントに来場された際に、興味をもたれた読者の方も少なくないだろう。RSRルックに仕立てられつつも、356の純正色であるテラコッタをベース色としているあたり、さぞ、クラシックポルシェへの造詣が深いショップだと思わせてくれる1台であった。


こちらがイベントなどで注目されていたデモカー。RSRルックに仕立てられつつ、356の純正色であるテラコッタをベース色としている。
 
このデモカーを展示していたのは、横浜にファクトリーを持つ" KOA SPEED"。老舗や名門と呼ばれるクラシックポルシェを扱うショップのなかにおいては新参のショップではあるが、KOA SPEEDの代表を務める大坪氏は、21歳の頃からのポルシェファナティック。現在まで100台を超すさまざまなタイプのクルマ遍歴を重ねながらも、常に空冷ポルシェは欠かすことなく所有し、その魅力を楽しんでいた。そして、もともとは誰もが知る自動車用品を販売する会社で、企画開発室室長を務め、数々のトレンドを自動車業界へと吹き込んだ張本人であり、さまざまなメーカーやショップのデモカー製作に携わってきた経歴の持ち主なのである。
 
そうした経験から、今回のデモカーもメーカー水準の高いクオリティが反映された素晴らしい完成度を持っているのである。KOA SPEEDがショーイベントで、デモカーとともに展示していたのが、"クラシックポルシェ専用"のエレクトリックエアコンキット。


エアコンシステムに加え、150Aオルタネーターなどのキットは、しめて90万1000円(税別)。10月末までに「クラシックポルシェ本誌を見た」とオーダーいただいた方には、標準取付け工賃50%オフのサービスも行っている。
 
エアコン本体はノーマルのブロワーケースと全く同じ形状で、後付けを感じさせない。そして、このキットの最大の特徴は電動コンプレッサーを使っているということ。エンジンパワーのロスもなく、酷暑のなかでもクラシックポルシェを快適にドライブすることのできる最強のアイテムだ。
 
もともと当時よりナローやビックバンパーへのエアコン装着率はとても低かった。大坪氏が21歳の時に、はじめて購入した1973年のミツワのディーラー車にはオプション設定のクーラーが装着されてはいたものの、何度も腕利きだと評判の電装屋さんに足を運んでも、快適さを感じられるレベルに仕上がったことはなかったという。
 
昨今、軽自動車などのエアコンシステムとコンプレッサーを流用して、クラシックポルシェに対応させているスペシャルショップもあるが、流用パーツは現物合わせをした一点物であり、小型のロータリー式のコンプレッサーを使用するとはいっても、やはり一番の魅力であるエンジンへの負担は隠せなかった。


ラゲージスペースに収められているのが電動コンプレッサーユニット。蓋をすればその存在には気がつかないだろう。


ノーマル然としたエンジンルーム。パワー、レスポンスをスポイルしないのが電動コンプレッサーを使用する最大の魅力だ。


電動ファンとシュラウドにより、冷却効果抜群のコンデンサーはリアタイヤハウス内側にインストール。
 
そんな中、ハイブリッド車では実用化されている電動コンプレッサーの出現により、パワーをロスさせず、ポルシェの魅力をスポイルすることのない、エアコンの付いたクラシックポルシェが現実味を帯びてきたのだ。しかし電圧の問題はシビアで電動コンプレッサーの容量不足など、問題は多かったという。そんな時に出会ったのが、イギリスのアフターパーツメーカーである"クラシック・レトロフィット"。エンジン点火パーツや、ブレードタイプのヒューズボックなどの電装部品を販売しているクラシックポルシェのスペシャリストだ。


ご覧のとおりノーマルのブロワーケースと同形状のユニット。違和感なくフィットし、リンケージもオリジナルを使用。


デモカーでは一例として、純正オーディオの位置にエアコン吹き出し口を後付け感なくビルトインしている。


オリジナルのファンレバーを使い3段階の風量をコントロール。純正のリンケージを使用し、見た目の違和感はゼロだ。
 
すぐにコンタクトを取ったところ、シンガーヴィークルデザインとRUFの車両にも採用しているとのことで、それまでの汎用品とは違う上質なものであると確信。日本でのパートナーとして輸入販売権を獲得した。さらに、大坪氏の提案により、日本用キットでは、専用のフィッティングパーツを製作し、高出力のオルタネーターも標準装備することになった。
 
このキットは電動コンプレッサーはラゲージスペースに、コンデンサーはリアタイヤハウス内にインストールされるため、エンジンルーム内の美しさを保つことができる。コンデンサーから排出される熱風はタイヤハウスより車外に放出されるので、懸念されるエアコン使用による油温の上昇が起こらない。日常使用に加え、過酷な状況下のクラシックレースやラリーにおいても、大活躍する装備になるだろう。
 
かくしてクラシック・レトロフィットとKOA SPEEDはメーカーと代理店という単純な関係ではない、クシックポルシェに精通する強力なタッグパートナーとなった。KOA SPEEDよりデリバリーされるキットは、無駄な加工やワンオフの部品を作ることなく、ボルトオンで装着できるものとなっている。
 
クラシックポルシェの魅力をスポイルすることなく、現代の酷暑のなかでも快適に過ごせるエアコンキットは、今後ヒストリックカーで当たり前の装備となるであろう。先駆けてクラシックポルシェでその効果を体感できるのは、とても嬉しいことである。

コアスピード
横浜市都筑区大熊町861-1
TEL:0120-315-911
URL:ホームページ

RECOMMENDED

RELATED

RANKING