アウトローという選択│抑えのきいた傑作ポルシェに乗る!前編

Photography: Paul Knight

待望の〝アウトロー〞がイギリスのポルシェシーンに登場した。フィル・ジャーヴィスの1958年ポルシェ356 Aは抑えのきいた傑作だ。

フィル・ジャーヴィスは筋金入りの空冷ファンである。空冷なら、出どころがヴォルフスブルクだろうと南部のシュツットガルトだろうとお構いなしだ。その車庫("乗り物倉庫"というほうが正確だが)にはドイツ生まれの空冷が幅広く集められており、最も古いものは、なんと1942年にまでさかのぼる。

フィルは40代で、オフィス向けの大容量収納システムを作る会社を経営している。公文書館やスペースが貴重な大規模オフィスにあるような、収納ユニットを手掛けている。妻のスーザンと17歳になる双子の息子、オリーとジョーの4人家族だが、フィルはカーコレクションとも結婚しているといってもあながち間違いではないほどの強者だ。


 
ガレージで最も古いのは、1942 年フォルクスワーゲン・タイプ166シュヴィムヴァーゲンだ。ポルシェが設計した水陸両用のオフロードカーで、第二次世界大戦でドイツ軍が使用した。VWコレクターの間では"聖杯"として崇められている。というのも、戦争を無事に生き抜いたクルマは少なく、完全に動く(そして泳ぐ)状態のものはさらに少ないからだ。

フィルはほかにも1952 年の"スタンダード版"VWビートルを所有する。国内市場向けの初期型で、ケーブル式ブレーキやノンシンクロの"クラッシュ"ギアボックスを特徴とし、ボディトリムはなく、快適性はごくわずかだ。これまた手を加えたりアップグレードしたりしていないものは希少なので、ファン垂涎のモデルである。

対照的に"フル装備"の1958年デラックス・ビークルもある。油圧式ブレーキ、一部シンクロのギアボックス、クロームのトリムを備え、車内もより豪華だ。次にはトランスポーターやバスなどと呼ばれるVWタイプ2が2台控える。1台はいわゆる11ウィンドウのバスだが、もう1台は後部の窓がないパネルバンタイプで、"ファイヤーバス"と名付けられたスペシャルだ。あきれるほどパワフルなVWエンジンを搭載し、なんとクォーターマイルを11.42秒で走破した。現代の大半のスーパーカーをはるかに凌ぐスピードだ。



ただし、いくらエキサイティングで面白いとはいえ、ファイヤーバスの実用性はほめられたものではない。かといってVWのバッジを付けた他のクルマはパフォーマンスでは対極に位置するから、田舎道をノロノロ走るのにぴったりのクルマばかりだ。では、もう少し走りを楽しみたいときはどうするか。根っからのヴィンテージVWファンであるフィルが目を向けるとしたら、当然、ポルシェのバッジを付けたクルマ、それも古いものということになる。そこで登場するのが356Aだ。

フィルはこう説明してくれた。「このクルマは、スティーブ・マーフィーが2009年にカリフォルニアからイギリスに持ち込んだ。その後、スティーブ・ウォーカーの手に渡り、彼から2013年に購入した。そのときは明るい赤だった。ガーズレッドかもしれない。よく見ると塗装前の下処理に手を抜いたのは明らかだった。それで、きっと塗装の下には、パテだらけといったような嫌なサプライズが隠れているに違いないと思っていたよ」

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Keith Seume Contact: Spikeʼs Vintage Restorations spikesvintagerestoration.com 

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