写真とフラット6の蜜月 PHOTOGRAPHIC AFFAIR

Photography: Bart Kuykens

写真家のバート・カイケンスは、クラシックポルシェとオーナーの関係をテーマに7冊の写真集を刊行している。シリーズが折り返し地点に達した機会に話を聞いた。

7冊シリーズの写真集を出版するのは勇気のいることだ。だが、バート・カイケンスはその大事業に乗り出した。オーナーとポルシェとの絆を切り取り、『A Flat 6 Love Affair』と銘打った芸術的な写真集にまとめている。最新刊はその4冊目にあたる。この機会に、仕事に対するバートの思いをじっくり聞いてみることにした。

バートの写真集は本としても見事な出来映えだ。美しい装丁で、極めてシンプルなスタイル。質の高いアート紙を使用し、バートの代名詞であるモノクロの写真が最高の品質で印刷されている。被写体はポルシェ一族から芸術家、レーシングドライバー、普通のポルシェ・エンスージアスト("普通"かどうかはさておき…)と幅広い。つまりクラシックポルシェ・シーンのあらゆる要素をカバーしている。書名には「フラット6」とあるが、ページをめくれば、356や550をはじめとする様々なモデルが登場する。


550スパイダーのディテールを説明するハンス・ペーター・ポルシェ。

バートはベルギーのアントワープで生まれ育ち、現在43歳。意外にも、その生い立ちは写真と無縁だったという。ただし、数年間ファッション業界で働き、多くの撮影に関わった。

「その雰囲気に若い頃から感じるものがあった」とバートは話す。「 自分は写真家だ、あるいは芸術家だと口にするのは初めのうちは難しい。なぜかといえば、"写真家になる"ための特定のルールはないからだ。写真で金銭を稼げれば写真家だといえるのか。私は違うと思う。写真は、ある手段を仲立ちに自分を表現する創造的プロセスであり、その手段がフィルムやデジタル画像というだけのことだ」

「まず何より、写真を撮るのは自分自身のためであって、ほかの誰のためでもない。繰り返すよ、ほかの誰のためでもないんだ。自分の作品が人に気に入られればラッキーだ。それで生計を立てられるかもしれない。たとえそうでなくても、立派な写真家になれる。ただ、最近はどんなビジネスでもそうだけれど、マーケティングがすべてだ」

写真を始めるにあたって、バートが刺激を受けたものや人を聞いた。「いち写真家としては、アントン・コルベインの作品が大好きだ。でも、ほかのものから受ける刺激のほうが大きいかな。音楽や映画、驚くような逸話を持つ人々や、仕事に打ち込む人たち。他の写真家と自分を比較しすぎると、そのスタイルの模倣に陥る危険がある。それが何を意味するのであれ、"ルール"に従うより、自分の道を進むのが一番だ」


ワルター・ロールと彼の993 RS 。

バートはほとんどモノクロでしか撮影しない。鮮やかな色彩だけで人の目を奪うわけではないから、より純粋だと考える人もいるだろう。また、バートはデジタルよりフィルムでの撮影を好む。

「私はデジタルよりプリントとアナログ撮影のほうが好きだ。デジタルは別物だよ。カメラの背面のモニターで、いま撮った写真を見たくなって、落ち着かない。流れが阻害される気がする」

「フィルム撮影のほうが、ずっと刺激的だ。たしかにデジタルより遅いしコストもかかる。でも満足感ははるかに大きい。デジタル撮影が勝っているのは仕事のスピードだけだと思う。問題は、クライアントの多くがその日のうちに作品を見たがることだ。フィルムの現像と印画を待つのではなくてね。そんなに待ちたくないんだよ」

アナログとデジタルの作品自体についてはどうだろう。「画質については、いくらでも議論ができるけれど、異なる二つのものを比較することになる。私にとっての写真はアナログだ。そしてたいていは白黒だね。私の機材は、35mmと75mmの単焦点レンズを付けたライカM7ひと組と、マミヤ6のキット、80mmの単焦点を付けたハッセルブラッドH1645と、110mmのポートレートレンズを付けたハッセルブラッド202だ」

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Keith Seume 

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