F1の創設者テディ・イップが所有した911Sの物語 前編

この2.2リッター911 Sは、セオドール F1の創設者テディ・イップが所有し、1970年のマカオ・グランプリで勝利した。レストアによってかつての姿を取り戻し、ポルシェ911の万能ぶりを今に伝えている。

マカオには60年以上に及ぶレースの歴史がある。舞台となるギア・サーキットは、港湾エリアをスタートし、市街地を南に下って再び貯水池へと戻る公道コースだ。かつてスターリング・モスが"モナコ以上にモナコらしい"と形容したのは有名な話である。マカオGPは、1950年代に地元のアマチュアによるスポーツカーレースとして始まったが、やがて海外からも参加者が集まるようになり、よりプロフェッショナルなイベントへと変わっていった。

しばらくは、スポーツレーシングカーとシングルシーターが混走するフォーミュラ・リブレとして開催され、1960年代後半から前座としてスポーツカーやツーリングカーによるレースも加わった。さらに時代が下ると、1980年代初頭にF3がメインレースとなり、有望な若手ドライバーが経験と名声を求めて集まる登竜門として注目されるようになった。この新フォーマットになって最初のウィナーが、かのアイルトン・セナである。

 

セナを支援していたのがテディ・イップだ。カリスマ的な実業家だったイップは、モータースポーツに身を捧げたエンスージアストでもあり、セオドール・レーシングを設立してF1にも参戦した。マカオとその周辺地域で事業を展開していたこともあり、生涯にわたってマカオGPを支援し、その発展の重要な立役者となった。



イップ自身もドライバーとしてマカオGPに参戦した。1950年代から60年代初めはジャガーXKやEタイプで走っていたが、60年代後半からポルシェに乗り換え、2 台の911Sとレーシングモデルの906を使った。911Sのうち新しいほうは、20年ほど前に渡英し、以来ずっとイギリスに保管されている。数年前に当時のカラーリングに戻すレストアが施され、イップの元でマカオGPに出走した全盛期の姿を取り戻した。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Robert Barrie Photography: Tim Scott (Fluid Images), Keith Seume and archive

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