ショパール アイコニックモデルの伝承│現代へも受け継がれるゆるぎないビジョン

老舗を継ぐべき青年が、伝統を守りながらも新しいビジョンを打ち出したいという強い信念を持ち、父の説得を試みる。なかなか首を縦に振らない父。だが、その姿は若かりし頃の自分そのものだった。父が息子の真の情熱を認めたとき、伝統が新たな息吹を持って蘇った。これはファミリーメゾンで実際に起きた物語である。

その青年の名はカール-フリッツ・ショイフレという。スイスのラグジュアリーウォッチ&ジュエリーメゾンであるショパール共同社長、カール-フリードリッヒ・ショイフレの息子であるカール-フリッツは、5年ほど前に父のデスクに「サンモリッツ」の時計が置かれていることに気付く。「サンモリッツ」の斬新なデザインやコンセプトに魅了されたカール-フリッツは、それに再解釈を加えて現代に蘇らせたいと考えた。しかし、そのアイデアを聞いた父カール-フリードリッヒはまったく興味を示さなかったという。なぜなら、それは父にとっては他の誰にも触れさせたくない不変のアイコンであり、不可侵といえる領域のものだったからだ。
 
では、なぜ父にとって「サンモリッツ」は特別な存在なのだろうか。それは1980 年までさかのぼる。当時22歳だったカール-フリードリッヒは、メゾンに新しいビジョンを提案した。当時のショパールではゴールド製、もしくはゴールド&ダイヤモンド製の時計を専門としていた中で、彼はステンレススティール素材を採用した、シックでありながらスポーティーなモデルをつくりたいと願ったのだ。確固たる信念を持つ息子の情熱に心動かされた彼の父カール・ショイフレは、息子にプロジェクトを任せることにした。


1980年の「サンモリッツ」広告。象徴的な8本のスクリューと滑らかなブレスレットは「アルパイン イーグル」に受け継がれる。
 
そうして誕生したのが、メゾン初のスポーツウオッチとなる「サンモリッツ」だ。その名のとおりファミリーの心の故郷ともいえるアルプスの環境と山村の暮らしにインスパイアされたこのモデルは、発売後10年にもわたりベストセラーとなり、メゾンにとってエポックメイキングな代表的作品のひとつとなった。
 
40年後、世代が変わって同じ物語が繰り返される。「サンモリッツ」をリデザインして世に送り出したいと願ったカール-フリッツは、父を粘り強く説得する。アイデアを諦められないカール-フリッツは、ひそかに祖父カールに相談してプロトタイプを制作し、父にプレゼンテーションを行ったのだ。プロジェクトにゴーサインが出るまでの道のりは決して容易ではなかったというが、確固たる信念を持つ息子の姿に、若い頃の自分を重ね合わせて心動かされた部分があったのだろう。40年前に父の同意を得たように、その情熱と可能性を父が認めたとき、伝統を重んじながらも再解釈により新しく進化した作品が誕生することになった。


 
息子の依頼を受け、父カール-フリードリッヒがデザインした新作コレクションは「アルパイン イーグル」と名付けられた。

「サンモリッツ」のスピリットを受け継ぎ、「形態は機能に従う(form follows function)」というコンセプトに基づいて作られた「アルパイン イーグル」は一体型のケースとブレスレットを備え、ベゼルには8本のスクリューが配されている。太陽に向かって飛ぶことができる唯一の鳥類である鷲の力強さからインスピレーションを得た文字盤は鷲の虹彩、針はその羽毛、スティールの冷たく美しい反射は氷河を彷彿させ、アルプスの鷲とそのビオトープをイメージすることができる。


写真は41mmルーセント スティール A223製、アレッチブルー文字盤。41mmは、ルーセント スティール A223×ベルニナグレー文字盤、ルーセント スティール A223×エシカルな18Kローズゴールド×ベルニナグレー文字盤の3種。36mmでは、マザーオブパール文字盤にダイヤモンドをあしらったベゼルなど、計7種が展開される。
 
その素材として用いられているルーセント スティール A 223 にも注目したい。オーストリアのvoestalpineにて4年以上かけて研究開発されたこのスティールは、現在、レア&プレシャスメタルに属し、サプライヤーから唯一ショパールだけに供給されているものだ。非常に耐久性が高く、一般的なステンレススティールの1.5 倍の耐摩耗性を備える。医療用のスティールと類似したクリーンでピュアなマテリアルは、独特な光の反射を生み出し、ゴールドに匹敵する輝きを放つ。



その輝きとしなやかなブレスレットの装着感はきわめて快適、かつ機能的にも審美的にも美しく、ラグジュアリースポーツウォッチとしての「アルパインイーグル」の存在感を際立たせているといえよう。アルプスの自然に敬意を払い、雪山をイメージしていながらもアウトドア一辺倒のタフなモデルとは一線を画した、ラグジュアリーかつエレガントなスポーツモデルとして仕上げられている。


 
祖父から父、そして息子へと受け継がれるゆるぎないビジョンは、ファミリーメゾンの経営や存続に不可欠である。40年前にはカール-フリードリッヒが父を、そして今、カール-フレッツが父を、同じように熱い情熱をもって説得し、伝統を大切にしながら新しい価値を創造した。「アルパイン イーグル」を発表するにあたり「イーグル ウイングス ファウンデーション」を新たに共同設立し、アルプスの自然を保護していく環境プログラムをたちあげるなど、いまショパールが重んじているエシカルな考え方や環境に対する配慮、サスティナビリティを重視した社会的な取り組みも、これからのファミリーにはより重要な指針となるに違いない。信念を持った男たちがどんな物語を紡いでいくのか、新作コレクションとともに注目していきたい。


ムーブメント、ケース、ブレスレットはすべて自社製、つまり素材以外はすべてスイスの自社で賄う。


アルパイン イーグル
(アレッチブルー文字盤)
ケース:ルーセント スティール A 223製、外径41.00mm 、厚さ9.70 mm 、防水性100m
ムーブメント:機械式自動巻きムーブメント Chopard 01.01-C、振動数 毎時28,800回(4Hz)、パワーリザーブ約60時間、COSC(スイス公式クロノメーター検定局)認定
ストラップとバックル:ルーセント スティール A223製ブレスレット、サテン仕上げのラージリンクとサイド、ポリッシュ仕上げのセンターキャップ、スティール製トリプルフォールディングバックル
価格:147万円(税別)

文:クラシックポルシェ編集部 写真:ショパール Words: ClassicPORSCHE Images: Chopard

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