空冷911と向き合うこと│あらゆる都市伝説を解明

Yokohama Turbo 2019/11/23

極端に使用目的が違う2台。 サーキット率9割のカレラと、ストリート率9割のターボ。 このような対極的な2台におけるセットアップに関しては正解不正解はない。 自分がどこをどれだけ目指すか?それが一番大切。

2014年、自身初の911である993MTからスタートしたポルシェライフ。たったの5年間ではあるが、短くも濃厚な時間を過ごせたと自負している。

993MTを13万km、Gカレラ3.2を3万km、Gターボ3.3を5万km、993Tipを3万km。走り過ぎだとか、もったいない…などと稀に言われることもあるが、そんなことを気にしたことはこれっぽっちもない。

ポルシェ911に限らず、運転好きな類の方なら誰にでもあるような、その特定車種への征服欲がそうさせているだけ、だと思う。リアエンジン/リアドライブという特異なレイアウトを持つ、ポルシェ911の長い歴史を考えると、あれこれと都市伝説めいたものがあるのは仕方がない…のだが、果たして本当にそうなのか?


最新世代911はつまらないのか?それは運転してみなければ何も言えない。ひたすら肥大化してつまらなくなった、とはいくらでも言える。しかし限界まで追い込んでみれば、紛れもなく21世紀のポルシェ911であることがわかる。

そういった都市伝説を、片っ端から壊していく面白さ。それがここ近年のうちにめでたく空冷911デビューを果たした、全てのオーナーにとって平等に与えられているのではないか?

①ポルシェ911はスポーツカーか?GTカーか?
まずはこれ。視野を広くすればスポーツカーかもしれないが、リアルなスポーツカーではない。この現実を受け入れなくては、ポルシェ911でのスポーツドライビング時のあれこれを語る際に支離滅裂になってしまう。

ロータスやジネッタ等の英国本気勢、イタリアのクラシック虫系やらバルケッタ系、或いは我が国のロードスターを駆るオーナーたちの前で、自分のポルシェ911は優秀なスポーツカーなので、とは恥ずかしくてとても言えない。


基本設計がほぼ40年以上も前、製造が30年以上前でありながら、普段使いからロングツーリング、スポーツ走行まで楽しめるGシリーズ911。


4人が乗れるレイアウトを持ち、居住性や利便性、高速巡航性能に優れ、トラクションを効率よく稼げるリアエンジン方式を356時代から引き継いで採用した911。そんな高性能車が、ことごとく出場したレースやラリー等で輝かしい戦績を刻み続けて現在に至る…これこそがポルシェ911の歴史とスタンディングポジションなのではないか。いささか強引な表現をすれば、ポルシェ911はスポーツカーでもGTカーでもない、「ポルシェ911」というカテゴリーの車なのかもしれない。

②真っ直ぐ走らない。
直進安定性が悪く疲れる。フラフラと落ち着かない…これはRRが故のホイールベースの短さに起因する宿命…と、簡単に片付けてしまわれがちな都市伝説だ。

それに対しての正しい答えは簡単だ。おそらくすべての自動車は真っ直ぐ走るように出来ている。それを阻害するような運転をすれば、どんなに優れた最高級サルーンでさえ真っ直ぐ走らないだろう。

ステアリングを握る力が強過ぎたり、腕に余分な力が入っているだけでフラフラしてしまうのは車の責任ではなく、運転手の問題だ。また、基準値から大きく外れたホイールアライメントや脚回りのセットアップ、著しく粗悪なタイヤ。こういった外的要因のせいで真っ直ぐ走らない911も残念ながら多く見受けられる。

まずは「正しい911の姿」を知り、そこから自分の運転スタイルや使用目的に合わせてのモディファイを楽しむ。話はそこからだ。

※横風の強い日に安定性に欠ける。これは仕方がない…のかもしれないが、速度を落として1〜2段下のギアを選択しトラクションをかけながら走れば良い。もしくはカレラ4に乗る、という選択肢もある。

③すぐにスピンする。危ない。
これも、まるで先人からの言い伝えのようによく聞く911の欠点伝説だ。ファイナルオーバーステア…これが諸悪の根源だ、とされているものだ。

前々回にて記したが、空冷911はモノコックボディ構造を持つ量産車でありながら、奇跡的とも言える「固体感」のカタマリみたいな車だ。まるで硬い岩のようなボディ。つまり、限界領域付近での車両挙動が手に取るように…いや、身体の一部の如く体感しやすい車であることを忘れてはいけない。


Go! Carrera! と。オーナー年齢差20歳!ではあるが、911への探究心は寸分の狂いもなく同じ。お互いに新車時代は知らずとも、その時乗られていた方々はどんなに面白い想いをしたのだろう?という興味が尽きないのだ。

例の綱渡りに話を例えれば、わざわざロープから足を大きく外す愚かな行為はしないはずだ。911とは、やってはいけない事がわかりやすい車であることを理解した上で、その特性を逆手にとって安全な場所で練習を重ねると…アンダーオーバー、加減速…スポーツドライビングにおける全てのアクションが自由自在に操れる快感を得られるだろう。

それこそがポルシェ911の真骨頂たるものと断言できる。すぐにスピンしてしまう…これが現実であれば、過去数十年にも及ぶ輝かしいレースでの栄光は無かったことになる。

④旋回速度が遅い。
これは本当だ。遅い。優れたレイアウトとパワーバランスの取れたFR車やミッドシップ車に比べると、悲しくなるほどに旋回速度が遅い。いや、ちょっと待て。そんな車が何故数々のレースで勝ちまくってきたのか?さっきまでの話とつじつまが合わないじゃないか?

旋回速度=コーナリングスピード。ここにヒントがある。コーナリングとは何か?ブレーキングやエンジンブレーキによる減速を終えて、スロットルを踏み始める加速行為に移る、ほんの一瞬の間がコーナリングと言えばわかりやすいだろうか?

911はその一瞬の間の速度が遅いのである。特に角度にすると180度以上だろうか、ぐるりと旋回するような半径の大きな回り込んだコーナーが苦手なのだ。その仕組みはコーナリングフォース最大時…タイヤのグリップ力が最大値付近における、思いっきりヨー方向の力がかかっている時にRRレイアウトがもたらす不安定さが原因で何も出来ない。

その間、同条件下において911よりも自由の効く、バランスの良い他レイアウトのライバル車に詰められ、あるいは引き離される。だからと言ってなす術なし、万事休すではないのが911の面白さだ。


Gシリーズ4段911ターボ…これにまつわる都市伝説はたくさんあれど、それがどうした?なくらいにのめり込める魔力を持つ1台。

まずは強烈無比なブレーキ。これを利用してライバルよりも深く減速できる。まるでレーシングABSのように優秀なABS5を持つ964や993であれば、クリッピング付近でABSを作動させたって構わないくらいの減速を試してみるといい。

次は短いホイールベースを活かした素早い方向転換だ。さっさと出口へ向けて車を曲げる。この間がコーナリングになるので、ステアリングとスロットルを使うも良し、ブレーキで積極的に曲げるも良し。とにかく瞬時に終わらせる。

そして仕上げが、トラクション性能を活かした立ち上がりだ。ここが他にはないポルシェ911だけの聖域だ。ヨー方向の力がまだ残っているような状況下にもかかわらず、フルスロットルにて加速に移れる快感。車は横に向かずに矢のように出口へ向かって真っ直ぐ加速する。

まとめて言い換えれば、“コーナリングではなく立ち上がりにタイヤを使う乗り物”が、ポルシェ911なのだと言える。むしろ、フルバンク状態ではスロットルを開けられないが、タイヤのミドル付近まで起こしてからスロットルを開けて加速させるバイクに近い。先述したような大きなコーナーでは、何度となくそれを利用しなくてはならないが、流石のポルシェ911でも物理の法則には逆らえないのだから、大Rコーナーは、はなから諦めるか果敢にもスライドを多用して対処すれば良いのだ。

つまり…延々と横Gを楽しむ素直な旋回マニアの運転手には受け入れられないのも、911の美点なのか…あるいは汚点なのかもしれない。

こう書いていてふと思うことは… WEC制覇の為にミッドシップ化された911RSRや、’90年代後半の911GT1…レースで勝ちを獲るために、ポルシェという会社の看板商品名を使わざるをえなかったであろう想いが伝わってきた。

Yokohama Turbo

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