ポルシェのミドエンジン・スポーツカー 914が辿ってきた歴史とは?②

二つの親会社から各50%ずつの出資を受けたVGには、ポルシェとVWそれぞれの社益の代表として、2名分のマネージング・ディレクター職が設けられた。PRを担当したのは、かの有名な名物レース監督のフシュケ・フォン・ハンシュタインだ。シュトゥットガルトの北に位置するルートヴィヒスブルクに約7万m2の敷地が用意され、モダンな目的志向型デザインの産業ユニットに、真新しい販売会社が設立された。
 
なお、こうした一連の動きや、北米市場におけるポルシェ販売網の再編は、拡大を続けるVWにポルシェが飲み込まれるのではないかとの強い憶測を呼び、「ポルシェは吸収されることを望んでいるのか」との噂も流れたという。
 
共同事業はおおむね快調に進んでいた。914のボディはカルマンが組み立てて4気筒エンジン車に仕上げられ、VWが販売した。一方、6気筒エンジンを搭載するためのボディは、カルマンがトリミングや塗装を完全に施した上で、ポルシェのシュトゥットガルト工場に送られ、911と平行してシュトゥットガルトで組み立てられた。
 
おおむね順調とはいえ、コスト問題は別だった。VWはカルマンに対して、ポルシェに供給する914のボディシェルの価格を上げるように要求した。しかも、提示された価格は、914同様にカルマンが製造していた、より複雑な構造を持つ911のボディシェルよりも高額だった。一体なぜそのような要求が出されたのだろうか。VWは914を少量生産で作業コストの高いモデルととらえていたため、このプロジェクトを存続させる唯一の活路を、ボディシェルのような組み立て前のコンポーネントの値上げに見出そうとしたのだ。


 
別の問題も起こった。VWは、ドイツ国内市場で販売する全モデルに「VW-Porsche」のブランド名を使うよう主張した。このぎこちない合成名称はポルシェのマーケティング部門には不評だった上に、顧客を混乱させるばかりだった。幸いなことに、活況を呈していた北米市場ではシンプルに「Porsche」として販売されたものの、ポルシェのエンブレムなどは一切取り付けられなかった。
 
914はそこそこに成功を収めつつあったものの、ポルシェが期待していたほどの利益源には至らなかった。1971年10月、クルト・ロッツに代わりルドルフ・ライディングがCEOを引き継いだ頃には、914の最盛期も残りわずかとなっていた。ライディングは頑強な人物で、冷徹な流儀でVWの再編に着手した。空冷エンジン車への投資は打ち切られ、水冷エンジン車に将来性を見出した決断は、後に、新たな共同開発となった924の誕生へとつながっていった。
 
では、914との暮らし心地はどうだろうか。914/4には、VWが設計製作した空冷4気筒エンジンが搭載されている。実はこのモデルには、製造期間全体を通じて、3種類の異なる4気筒エンジンが採用されている。どのフォームもメンテナンスは容易だ。


 
最初期のエンジンは、1969年から73年まで搭載された1.7リッター(1679cc)の「タイプ4」ユニットだ。これはVW のモデルとしては評判が芳しくなかった411や412から流用されたユニットだ。その後1976年の生産終了までは、1.8リッター(1795cc)エンジンと、VW製の2リッターユニットが並行して搭載された。後者の2リッターユニットは、ポルシェ911Tの6気筒2リッターエンジンとは別物の4気筒である。ポルシェの6気筒2リッターエンジンは、比較的レアな914/6に搭載された(914/4の生産台数は11万5596台だった一方、914/6の生産台数はわずか3360台だった)。最高出力はエンジン仕様によって異なるものの、1.7リッターエンジンの80bhpから6気筒エンジンの110bhpまでの範囲となっている。
 
また、1973 年より前に製作された車体には、「テール・シフト」として知られる、シフトのリンケージがギアボックスの後ろに取り付けられたものが採用された。オリジナルの901と同じ型にあたるドッグレッグ・パターンだ。1973年以降の車体には、リンケージが変速機の横に入り込んだ「サイド・シフト」ボックスが採用された。この方式により、901型のギアボックスで課題とされていたギアチェンジが快適になった。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:フルパッケージ Translation: Full Package Words: Keith Seume and Paul Knight Photography: Paul Knight and Porsche Archiv

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