ポルシェのミドエンジン・スポーツカー 914が辿ってきた歴史とは?③

Photography: Paul Knight and Porsche Archive

914の所有を検討するなら、911や912に比べて安上りな選択だろうと早合点するのは禁物だ。エンジンのパーツは比較的安価で入手できるものの、他の914独自のコンポーネント類は見つけるのが困難な上に価格も高額だ。また、概して1980年代より前に製作されたクルマに起こりがちな事情として、メンテナンス状態の悪い914では錆が大きな問題になる。

残念ながら、カルマンは防錆についての対策が弱かったようで、914のボディシェルをむき出しの状態で精査すると、錆やすい箇所や、錆対策を施されていない継ぎ目などがあちこちに見受けられる。

中でも、最大の懸念はバッテリートレイの周辺だ。バッテリートレイは、グリルの下のエンジンベイ側にじかに取り付けられている。このため、雨水がバッテリーから漏れた電解液と混ざると、腐食性の液体となってボディの隣接部分を静かに腐食させていってしまう(正規のバッテリーカバーは紛失しているケースが大半だ)。

さらに、バッテリーはサスペンションの主要なピックアップ・ポイントの上にじかに設置されているため、深刻なダメージにつながりやすい。リペアは高額な上に労力もかかる。車体のこの箇所が「ヘル・ホール(地獄穴)」と呼ばれるには、理由があるというわけだ。

また、シルの錆も忘れずに確認する必要があるだろう。シルはリベットで固定されたカバーで覆われているため、実際のコンディションは目に見えないことが多い。914の購入を決める前には、可能ならカバーを外して、シルの状態を確認すると良いだろう。ただ、そこまで容認してくれる販売店はなかなか存在しないだろう。



それでも、シルが錆びている場合には車体の真ん中がたわむために、ドアを開ける際にひっかかりを感じるはずだ。この点を、タルガルーフを外してからチェックすると良いだろう。タルガルーフはグラスファイバーのパネルにすぎないものの、ボディ全体の剛性を増す上でも大きな役割を果たしているからだ。

良好な状態にメンテナンスされた914は、どんな基準から見ても素晴らしい。前世代モデルのポルシェ356と同様に、914は噛みしめるほどに味わいが出てくるようなクルマだ。決して、猛烈なパフォーマンスや、安っぽいドライブを目的に購入するようなクルマではない。とにかく欲しくてたまらないからこそ購入するクルマ、世間並なクルマとは別格の素晴らしさや、夢のようなドライブ体験を叶えてくれるクルマだ。

ミドシップに搭載されたエンジンや、その成果であるニュートラルな操作感のおかげで、タルガトップのVWポルシェは路上のどんなものも霞んでしまうような存在感を放つ。914でお気に入りのルートに繰り出せば、途中で怖じ気づいて引き返さない限りは、後続のどんなクルマも塵の彼方に引き離してしまうだろう。コーナーの途中で減速すれば、眼前には周囲の素晴らしい景色が旋回して広がり、すぐれた極慣性モーメントの世界にいざなわれることだろう。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:フルパッケージ Translation: Full Package Words: Keith Seume and Paul Knight Photography: Paul Knight and Porsche Archiv

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