11年で400台以上のポルシェを集めた人物とは?会社を訪ねてみて ①

Photography: Antony Fraser

マンフレッド・ヘリングは、たった11年で400台以上のポルシェを収集した。その数は今も増え続けている。いったいどんな人物なのか、ドイツにある彼の会社「アーリー911 S 」を訪ねると、そこには驚くべき光景が待っていた。

わたす限り広がる911の海。総勢なんと400台。マンフレッド・ヘリングが所有する広大な工場跡地は、どの区画もポルシェで埋め尽くされていた。ポルシェを1 台所有したことがある者は多い。4台も所有できたら夢のようだ。時に20台、30 台と集めるコレクターがいるのは知っている。しかし、400台である。完全に異次元のレベルである。
 
私たちは三度目の正直でようやくマンフレッドを捕まえることに成功した。長身で健康的、人当たりがよく、ダイナミックなビジョンを持つマンフレッドは、活気溢れるドイツの都市、ヴッパータールを拠点とする。私とカメラマンが快適な一夜を過ごした石畳の市街地には、19世紀に建てられた風格あるスレート張りの家々が並んでいた。


 
打って変わってこの光景である。マンフレッドが所有するものとそのスケールは、到底すぐに飲み込めるものではなかった。さながらポルシェの中央ターミナルだ。どちらを向いても、あの特徴的なルーフが隙間なく並び、多種多様な色が目に飛び込んでくる。ルビーストーンやマゼンタ、ガーズレッドにアイボリーホワイト、レーシングイエロー、オークにミントグリーン。色とりどりのレーシングカーも点在する。
 
このコレクションとそれに付随するレストレーション施設は、隣接する7棟の建物から成り、床面積は8000平方メートルに及ぶ。田園が広がり始めるヴッパータールの外れに位置し、建物の前に広がる駐車場も同じくらいの面積があるから、今後もスペースの心配はなさそうだ。
 
コレクションを構成するのは希少性の高い特別なポルシェばかりで、大半が911だ。ここにマンフレッドは75人のスタッフを抱えているが、来年には100人を超えると自信たっぷりに話す。クルマはすべてマンフレッドのものであり、顧客のクルマを預かっているわけではない。「私のコンセプトはこうです。自分の目にかなったクルマをすべて購入し―その予算があればの話ですが―それを取っておいて、クルマを探している人に見てもらい、買いたいクルマが見つかったら、100%オリジナルになるように私たちがレストアするのです」
 
レストアの手法は伝統的なものだ。「クルマが到着したら分解して、どこがオリジナルでどこがそうでないかを調べ、それからレストアを始めます」ボディシェルはブラスト処理に回され、足回り部品はチェックと修繕を受け、エンジンとギアボックスはパワートレーンのワークショップでリビルドされる。


 
マンフレッドがポルシェ全般、ことに911を分け隔てなく愛するのは明らかだが、クルマの購入には厳格な基準を設けている。特にヴィンテージを中心に扱うことは、「アーリー911S」という社名が示す通りだ(今後は変わっていく可能性もあるが)。
 
マンフレッドはこう話す。「希少モデルか、特別なヒストリーを持つ特別なクルマでなければなりません。ここにはファクトリーの広報車が何台もあります。その一例が正式な広報用のロゴを付けた最初の993ターボです。特殊なカラーのクルマもありますよ。2.0リッターの911は1964年と65年式だけです。次の"S"は全モデルが揃っています。2.0S、2.2S、2.4Sに2.7RS。カレラも2.7と1974年から76年までの3.0がすべてあり、930ターボ系も全部あります」
 
近年のポルシェも数台あるのは確かだが、圧倒的に多いのは古いモデルだ。「最初の計画では、初期の911、つまり1964年から73年までのモデルに絞るつもりでしたが、考えは変わり続けています。次は水冷モデルに手を広げようと計画しているところです。ただし、996 GT2 RSや997 GT2 RSのようなスペシャルモデルだけですが。徐々に異なる時代に広げているところです」
 
クルマのコンディションはそれほど重要ではない。隅々まで完璧にレストアできる態勢が整っているからだ。「概要を説明しましょう。これは、先週ニューヨークから来た2.7RSです。ご覧の通り、オリジナルではあるけれどもレストアしすぎない状態がクライアントの希望です。今では世界中からクルマが集まってきますよ。完成したクルマには2年か5年の保証を付けています」


 
先を見越した計画が重要だとマンフレッドは話す。「サスペンションをレストアする場合、私たちは一度に1セットでは行いません。50個くらいの単位で発注したり製作したりします。1台のためでなく、最低でも20のプロジェクトを念頭に行うのです」
 
こうすれば、メッキのような作業をまとめて行うことができ、経済的だ。「この2年は特別なクルマを2台レストア中ですが、取り付けるパーツも特別なものです。オリジナルで、複製品ではありません。広いガレージは、2000平方メートルほどがパーツだけで占められています」
 
他のスペシャリストからパーツを取り寄せることもあるが、時間がかかったり品質に疑問があったりすると、特注で製作させる。その際も、ストックや販売用に余分に造らせるのだ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO( Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Johnny Tipler 

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