ポルシェ911を自作?ひとりの人物が歩んだ長い道のり①

製作に7年を要したクリス・ジュリーのホットロッド・ポルシェは、ワンオフパーツが豊富に集められた特別なクルマだ。だが、これは大枚を投じて行われた作業ではなかった。彼が選んだのは、作業の大半に自ら挑むタフな道のりだった。

クリス・ジュリーの"モッドロッド912"は、大西洋を挟んでインターネット・フォーラム界のスターになっている。ネットに上げられたクリスのウィットにあふれたやり取りからは、彼は雲の上の大金持ちではなく、自分たちの仲間なのだという親近感が伝わってくるからだ。時間がかかり苦労も多いリビルドの紆余曲折が、山あり谷ありと楽しそうに分かち合われているのだ。

7年間は相当な期間だ。その間に彼は3カ国で暮らし、3種類の仕事をし、手術を2回経験し、子供が2人産まれ、6棟のガレージを使ったという。

話は2006年に遡る。その前年、クリスは勤務先であるアディダス社の異動でドイツからアメリカのオレゴン州ポートランドに転居してきた。大学では送機器デザインを専攻したが、職場ではトレーナーをデザインしていたという。「クルマも好きだけれど、情熱を感じるのはスニーカーさ」と彼はいう。 オレゴン州に落ち着いた後、クリスは1967年製の赤いポルシェ912をシアトル在住のベトナム戦争退役軍人から購入する機会に恵まれた。「古いポルシェを持つことは子どものころからの夢だった。でも、とても手が届かないと思っていた。あの時もBMW2002を見に行ったんだが、なぜかポルシェといっしょに帰宅していたよ」

「912はおおいに気に入って、ポートランド界隈をドライブして楽しんだものさ。その頃にDDKやPelicanといったインターネット上のフォーラムを見つけて、ゆっくりと、でも確実にクラシック・ポルシェの世界に入りこみ始めたな。小さくて赤い912は僕とうまがあってね。フックス・ホイールを履いてみた。さらにサスペンションとエンジンをアップデートしようかとも考えたこともあったけど、あのクルマは僕がまだたった3 人目のオーナーで、きわめてオリジナルな状態だったことで改造は諦めたんだ」

クリスは代わりに「プロジェクトカー」の製作を視野に物色することにした。彼の頭の中に浮かんだのは、ポルシェ製ホットロッドともいえる稀少な911Rだ。911Rのシンプルさや、「余計なものは少ないほど豊か」とも思える精神を愛してのことだった。妄想の終着点は30歳の誕生日プレゼントに、愛妻から1968年製912のローリングシェルを贈られたことだという。



「僕、いや、僕たち夫婦は、新しくポルシェ仲間として知りあったデイビッドから、その車体を入手したんだ。10マイル離れた自宅までの配送料込みで、900ドルで握手をしてね。彼は『エアフィックス製の大きなプラスチックモデルくらいに考えておいてくれよ』と冗談を飛ばしていたっけ」とクリスは笑う。その冗談は真実だった。クリスは余暇の大半を使ってインターネット上の類似プロジェクトのフォーラムに目を通し、必要なリペア項目を洗い出した。リストには、フロア、サスペンションを覆う金属パーツ、バッテリー・マウント、ボディワークの複数箇所などが並んだという。

集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:フルパッケージ Translation: Full Package Words: Keith Seume Photography: Daniel Schaefer

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