特別なポルシェ914│クラッシュしても良いようにレプリカ製作!

自分の元ワークス914/6 GTラリーカーがいかに貴重なクルマとなっているかに気づいたとき、ドミニク・ヴァン・デル・ハイデンは真剣な競技からは引退させるべきだと決めた。その代りにレプリカを製作すれば、ポルシェの歴史の重要な一部を傷つける心配をすることなく、森の中のステージを思い切り楽しむことができるはずだからだ。

ドイツ北西部の工業地帯のある倉庫の中に、鮮やかなオレンジ色の914/6GTが2台並んでいる。遠目には同じように見える2台は、実はその歴史も目的もまったく正反対だった。一台は今や値段がつけられない大切な遺産である。フランツ・コンラッドやビョルン・ワルデガルド、ユルゲン・バルト、そしてオラフ・マンタイなどのポルシェのスタードライバーたちが駆った元ワークスカー。そしてもう一台は古いロードモデルをラリーのためにボディシェルから作り直した、いわばレプリカである。
 


2015年の"AVDヒスト・モンテ"で優勝した後、ある人がこのマシンのオーナーであるドミニク・ヴァドン・デル・ハイデンに信じられないような金額を提示した。そのとんでもない数字が、このようなヒストリーを持つクラシック・ポルシェの現実の値段なのだということを理解した時、突然、彼は雪の中を立ち木や崖に向かってドリフトすることに歓びではなく恐怖を感じたという。

「もし私がこのクルマをクラッシュさせたら、それはクルマを壊すだけでなく、ポルシェの歴史の一部を破壊してしまうことだと気付いたんだ」そこで、オリジナルモデルを競技に使うことを止めて、その代わりにレプリカを作ることを決心した。森の中や雪の壁をすり抜けてもまったく心配することのないワークスカー・レプリカの製作に乗り出したのである。
 
最初の計画は、15年も慣れ親しんだオリジナルそのままのレプリカを造ろうというものだった。しかし間もなくその計画はちょっと別の方向に向かっていく。古いボディシェルに取り組んでいるうちに、このボディなら本当にやりたかったことを実現できるのではないかと考え始めたのである。どのような部分の改造が許されているかを知るためにFIAのヒストリック・レギュレーションを調べているうちに、ポルシェが自分たちでなぜ簡単な改造をしなかったのかとさえ不思議に思い始めた。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words & Photography: Robb Pritchard

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