ポルシェ914のレプリカを思いのまま操れるようにするため施したのは?

Photography: Robb Pritchard

この記事は、 特別なポルシェ914│クラッシュしても良いようにレプリカ製作!の続きです。

この大胆なダイエットのみならず、パワートレーンの性能向上についても抜かりはなかった。エンジンのチューニングはマンフレート・ルーゲンに依頼し、すべて精密にバランス取りしたうえに、シリンダーヘッドやバルブ、カムシャフトもワークスカーと同じように作り直された結果、最高出力は市販モデルの185bhpから235bhpへとパワーアップした。


FIAのルールによればギアリングは自由であり、そこでタイトな低速コーナーでも使いやすいように1速ギアを高く設定、いっぽうで他のギアは低いままにした。ターマック・ラリーではトップスピードよりも加速力が物をいうからである。もちろん、ある程度の妥協は受け入れなければならない。主なライバルは3リッターかもっと排気量の大きな911であり、長いストレートが多い舞台では後れを取るものの、タイトなステージでは軽量とミドシップを活かした敏捷な914/6は、どんなライバルにも引けを取らない速さを見せた。
 
1970年代からレースやラリーに参加し、ドライバーとしてRACラリーや1000湖ラリーにも出場経験があり、さらにニュルブルクリンク24時間でクラス優勝するなど豊富な競技経験を持つドミニクは、当然ながらハンドリングをどのようにセットアップすべきかを熟知していた。ところが、この914については想像していたよりもずっと難しいことが分かった。



「オリジナルの914では限界ギリギリまで走らせることはなかった」と彼は語る。「ほとんどのクルマの場合、滑り出そうとするポイントを感じ取ることができるから、そこでスロットルを緩めて引き戻すか、あるいはクルマによってはそのまま滑らせてドリフトをコントロールするかを判断できる。ところがこの914では、この辺りが限界かなと探っているうちに、あっという間に後ろを向いてしまう。何とかうまくコントロールできる方法を見つけたいと考えていた」
 
ワルデガルドやコンラッドなどポルシェの有名ドライバーからのアドバイスも同様だが、一般的な定石は、サスペンションを岩のように硬くして、スタビライザーは反対にソフトにするというものだ。しかしながら、ドミニクと彼のメカニックがどんなに手を尽くして試しても、パワースライドを維持できずにスピンしてしまうばかりだった。

ある時、ひとりのメカニックが腹立ちまぎれにまったく逆の方法を試してみた。つまり、ソフトなサスペンションと硬いスタビライザーの組み合わせである。すると、信じられないことに思い通りに操縦できるようになったという。それに加えて、ダンロップがこのポルシェのために特別に作ったハイプロファイルタイヤを装着した。サイドウォールがソフトでたわむ特製タイヤである。できることは何でもするのがドミニクの主義なのである。そうして彼らはギリギリのタイミングでマヨルカ・クラシックラリーに向かうトレーラーに積むことができた。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words & Photography: Robb Pritchard

RECOMMENDED

RELATED

RANKING