ポルシェのターボエンジン開発 難問だったスタッドボルト

3リッターターボとカレラ3のクランクケースはポルシェが馴染んだ設計を踏襲しており、左右二分割式のケースは11本のスルーボルトで結合されていた。鍛造クランクシャフトは8メインベアリングを持ち、その径は56 . 9 m m(ビッグエンドは51.9mm)、クランクは窒素を浸透させる硬化処理が施されていた。カレラ3のピストンは鋳造タイプで頂部が丸く、圧縮比は8.5:1、いっぽうターボのピストンは鍛造でフラットトップ、圧縮比は6.5:1に留まっていた。というのもターボチャージャーによって混合気が過給されると燃焼圧力が上がってしまうからだ。
 
アルシル・ケースはその後も使用されたが(実は現在も使われている)、3リッターエンジンのクランクシャフトはそのシリーズの最後のものとなった。3.3リッターユニットではより重いクランク(メイン59.9mm/ビッグエンド54.9mm)が採用され、それは911SC用3リッターエンジンの基本にもなった。
 
ポルシェの伝統に従って、向かい合った3本のシリンダーは独立しており、各シリンダーバレルにはカレラRS2.7で初採用されたニカシル素材が使用されていた。冷却性能を向上させるためにターボエンジンではシリンダーを取り囲むシュラウドが改良され、後の3.3リッターエンジンになると各シリンダー上部のフィンは、冷却を均一化するために(と言われている)省かれた。左右のクランクケースに栓のように差し込まれたシリンダーは4本のボルトで、シリンダーヘッドとともに結合されている。3.3リッターユニットではヘッドとシリンダーバレルの間にガスケットはなく、磨いたヘッドとバレル上面は正しくボルトを締めることで密着されている。


3.3リッターエンジンで導入された大型オイルポンプ。圧送側はアルミニウム、吸入側は鋳鉄製。
 
930エンジンは" Dilavar"という合金製ボルトを初めて採用したが、それはクランクケースの素材と反応、いわゆる電蝕を招いて少なからぬトラブルの原因となった。1983~84年には軸をプラスチックコーティングした改良型が導入されたものの、このトラブルは1994年、993型のM64ユニットで新型ボルトが採用されるまで完全に解決しなかった。驚くことにターボエンジンは専用スペックのアルミヘッドを採用していた。自然吸気ユニットと同じ径のバルブ(吸気側49mm/排気側41.5mm)を使っていたが、ポートは吸排気ともに小さく、3リッターではそれぞれ32/36mm、後の3.3リッターでは排気側がさらに34mmに小径化されている。燃焼室形状もターボ専用で、2本のバルブは浅い角度で焼結鉄合金シートに設置され、排気バルブは冷却性向上のためにソジウム封入式とされた。
 
さらにターボには画期的なシステムが盛り込まれた。左バンクのカムシャフトからのベルトで駆動する小さなポンプで排気ポートに空気を送り込み、燃焼室を出たガスをさらに燃やそうというもので、この機構はエミッションレベルを低減しただけでなく、中間域でのターボ回転数を増すことでエンジンのレスポンス改善にも効果的だった。


ボッシュ製Kジェトロニック機械式燃料噴射システム(同時代のほとんどのポルシェが使用)は燃料量をコントロールするためフラップ式のエアフローメーターを持つ。
 
カムシャフトのレイアウトはそれ以前の911と同様、1本のシャフトが各バンクに取り付けられ、クランクケース内のインターナルシャフトからのデュプレックスチェーンがそれを回す方式だった。それぞれのカムは4ベアリングを持ち、バルブ駆動はスチール製ロッカー、タペットのクリアランス調整は手動式である。ポルシェはターボユニット専用のカムシャフトを開発、すべての排気量で同じプロファイルを使用している。他の911ユニットと同じく、ターボは1984年から改良型の油圧チェーンテンショナーを備え、長いチェーンに適切な張力を与えるために様々なタイプのガイドが使用されている。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words: Paul Davies Photography: Porsche AG, David Wigmore and the author

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