34年かけてポルシェ911を再生させた人物がチューニングにのめり込んでいくまで



34年間の月日が流れると、レースの安全基準も変わっていく。911Sの内装にはオリジナルの部品はほとんど残っていない。FIA基準を満たしたロールケージ、シートやハーネスは真新しく、カーステレオが収まっていた場所にはスイッチパネルが配されている。ワイパーのステー部分のひとつは電源のキルスイッチになり、かつてアンテナが収まっていた場所は自動消火器のスイッチへと変更されている。

ジョンの911Sはサーキットでこそほぼ無傷だったが、公道では追突事故に遭遇した。けがもなく前向きだったジョンは、これを好機と捉えて剥離塗装を敢行。5カ月を要したが、現在でも15年前に再塗装したとは思えない美しさが保たれている。リアに装着しているRSダックテールは、20 年前に150ドルで購入したという。それ以外のパーツはレースに必要なものを揃えていった結果であり、特段"レースマシンらしく"仕上げたのではない。



カーナンバーのデカールも剥がすのが面倒でそのままにしておいたら、いつの間にかこのクルマのアイデンティティと化した。ダッシュボードに自身の名前が貼ってあるのは動画編集の際、インカー動画の素材が誰の車両から撮影されたものか識別しやすくするためのもの。このクルマはサーキットを走るためにコツコツ、チューニングが施された車両で伊達ではない。ただ、最近はサーキットからは縁遠くなったと漏らす。

「8 年くらい前から急激に状況が変わりました。911の価値が高騰し始めたのと、私が年を重ねたせいかライバルたちの走りがアグレッシブに感じられるようなってきました。いつしかサーキット走行への情熱もトーンダウンしてきたことは否めません」

だが、ときおりタイムトライアルには参戦しているし、街中で911Sに乗ることを楽しんでいるという。かつて、ただの古いスポーツカーだった911Sかもしれないが、34 年の歳月をかけてアメリカでは伝説的なレースマシンとしてその存在が知られるようになった。もちろん、ジョン自身もポルシェチューニングの"生き字引"として、アメリカで彼の存在を知らないものはいない。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:Alex Grant Photography:Andy Tipping

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