全貌が明らかに│名門カロッツェリア ザガートが手がけた特別なポルシェ

『クラシック・ポルシェ』誌は、カロッツェリア、ザガートのワークショップから生まれた「復元モデル」を独占取材した。

最近では、多くの有名メーカーが、過去の重要なモデルの復元に挑戦している。ジャガーが、9台の"新型"XKSSを製造するという発表を行った後、アストン・マーティンもまた、25台のDB4GTを限定生産する計画を明らかにした。
 
ポルシェは、この種の計画を一切発表していない。だが、シュトゥットガルトの本家ではなく、イタリアのカロッツェリアであるザガートが、同社とポルシェのコラボレーションで成功を収めた歴史を明らかにするため、ある特別なポルシェのモデルを再登場させる計画を立てた。
 
このプロジェクトの詳細を知るために、本誌はミラノ近くのローにあるザガート本社を訪ね、世界で初めてその全容を取材した。ザガートとポルシェが協業した歴史を知る者なら、だれでも1960年代初期に20台のみが製造された、ザガートボディの356カレラ・アバルトGTLクーペの存在を知っているだろう。しかし、今日、私たちがこの場所で目の当たりにしているクルマの起源は、もっとレアだ。私たちはザガート社の後継者である、アンドレア・ザガートCEOに、彼の計画について尋ねた。



「100年間で、ザガートはおよそ400種類の車種を設計・製造してきました。非常に有名なものも、それほどでもないものもあります。すべてが現存しているわけではなく、そのうちの数台はもう残っていません。そこで私たちは、数年前に、当社の歴史の中で、ブランドの発展に不可欠となったモデルを数点選び、復元することを決め、これらを「Sanction Ⅱ」モデルと呼ぶことにしたのです」
 
しかし、このプロジェクトには条件があり、アンドレア・ザガートはその一部について説明した。「これらのクルマは、当社の設計開発において、重要であったことは間違いありません。ジャガーやアストン・マーティンの例とは対照的に、ザガートは絶滅したモデルを復元することのみを追求しているため、オリジナルの車体は残っていません。サンクション(承認)された復刻を行うことで、この機会がなければ楽しむことができなかったはずのクルマを知って、体験してもらいたいのです」
 
2006年、ランチアのブランド創立100周年の場で、ザガートはランチア・アプリリア・スポーツ・ザガートの存在に注目した。このロードスターは、1938年にアンドレアの祖父、ウーゴ・ザガートが最初に手掛けたもので、同社にとって極めて重要なクルマだった。この画期的なデザインは、当時は一般的な突き出した形状のフェンダーを持たない、大部分が平坦な外観を特色としている。横からみると航空機の羽根のように見えるのは、ウーゴが学んだ航空工学に明らかに影響を受けている。


 
しかし、ザガートの資料保管庫は、第二次世界大戦中に英国軍が投じた爆弾によって、ほぼ完全に破壊されてしまった。そこで、ウーゴの孫であるアンドレアは、そのデザインを再現する際、オリジナルの設計図やブループリントに頼ることができなかったのだ。

「サンクションⅡの復刻のための参考資料になるものは、画質が荒れた数枚の白黒写真だけしかなかった」とザガートは話す。アンドレアとチームはCADを駆使して、コンピュータを利用した測定システムを開発し、オリジナルの写真の上にグリッド線を配置した。ザガートは誇らしげに、こう説明する。

「私たちはいつも同じグリッド線を利用して、発見できたすべての写真に映してみました。最終的に一連の測定ポイントの収集が済むと、その当時にそのクルマがどのように見えたのか、詳しいサイズはどうだったのかということが、明らかになっていきました」
 
これらのデータポイントに基づき、コンピュータが詳細な三次元映像を作成。ザガートでは、これを「マスマティカル・マスター(数学博士)」と呼ぶ。これを利用して木製の原型を作り、その後、高度な技術を持つイタリアの職人が、この模型の上に、手作業でボディパネルを成形した。その結果、9台のランチア・アプリリア・サンクションⅡモデルの限定シリーズが製造され、2006年にボローニャ・モーターショーで、アンドレア・ザガート自身がお披露目した。
 
なぜ9台なのか?・・・次回へ続く

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO( Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:平野Julia、東屋彦丸(BE-TWEEN) Translation:Julia HIRANO, Hicomaru AZUMAYA(BE-TWEEN) Words:Axel E Catton Photography:Federico Vandone DellʼAcqua and Zagato archives

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