栄光への復活│究極のターボ・ポルシェを夢見た男のレストア魂

『クラシック・ポルシェ』誌は、2012年のル・マン・クラシックに向けて製作されたオリジナル934のリビルドを追った。

モナコ在住のパオロ・ファルディニは、ターボチャージャー搭載のポルシェに熱い情熱を抱いている。とりわけクラシックレーシングポルシェへの愛にあふれている。

「現在、エンスージアストとしてミドルエイジを迎えているということは、とても幸運なことだと思っている。素晴らしいレースが行われた1970年代を過ごす機会に恵まれたのだから。ル・マンでターボチャージャー搭載のポルシェをドライブする夢を、私はずっと抱いて育ってきた。そして、ル・マン・クラシックに必ず出場しようと心に決めたのだ」
 
ポルシェ・エンスージアストの多くが描く夢だろうが、その実現には莫大な労力と費用が必要である。さらにいえば、自分が望む最高の一台に巡り会い、それを所有するまでには、乗り越えなければならない難しい問題がある。ル・マン・クラシックにポルシェで挑戦したいと望む人々にとっては、比較的軽度にモディファイされた356に始まり、917やRSRに至るまで、明確に幾つかの選択肢がある。


 
パオロにとって、自分のための至高のポルシェはたった一台しか存在しなかった。パワフルだが、見過ごされることが多い934だ。「数年前、私は934について詳しく調べ上げ、このクルマの魅力を見つけた。もちろん、935の方がはるかに速く、運転しやすく、よりパワフルで、多くのレースに勝利している。だが、私には様々な理由から934が魅力的なクルマであることが分かった」

「934はその筋肉質なボディの内に911のDNAを消し去ることなく保持している。運転も難しく、体得するのに時間がかかるだろう。行儀が悪く、簡単には扱えない。そして、重量もあり、ターボラグもある。つまり、ドライバーは、果敢にコーナーを曲がりながらも、スロットルの反応を予測する必要がある。ドライバーはタイミングを逃さず、ステアリング操作を極めて的確に行わなければならない。だが、このテクニックを体得できれば、その報酬は計り知れないはずだ」

「934は、パワー、マッスル、加速性能、さらには匂いにいたるまで、偉大なレーシングポルシェの本質でまさに満たされている。私のようなターボジャンキーにとって、934は究極のレース用911なのだ。ル・マン・クラシックの出場を考えた時、私にとって必要なクルマは934でなければならなかったのだ、絶対に」
 
しかし、パオロはそれが簡単に手に入るような代物ではないことは、分かっていた。



「1976年に製造された934は31台。これに加え、1977 年に若干のモデルチェンジが行われた"934 1/2"のコンフィギュレーションが10台。たったこれだけだ。よって、934を見つけ出すのは簡単なことではない」

「さらにいえば、すべてのレーシングカーは過酷な人生を送った。さらにまずいことに、ポルシェが、レーシングカーとして935と936に焦点を当てたため、すべての934は個人に販売され、プライベートカーとしてレースに参戦していた」

「年月を経て、規制の変更、空力対策やエンジンの改良、事故の修理など、オーナーによる改造が施されたはずだ。それにも増して、プライベートチームでは正規スペアパーツの入手に限界があっただろう。諸々の要因があいまって、ほとんどの934は、原型が損なわれていることは間違いない。手付かずのものを見つけることは事実上不可能というわけだ」
 
パオロは、現実をかみしめながらも、理想とするクルマを探し始めた。


・・・次回へ続く

編集翻訳・構成:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:平野Julia、東屋彦丸(BE-TWEEN) Translation: Julia HIRANO, Hicomaru AZUMAYA(BE-TWEEN) Words: Keith Seume Photography: Paolo Faldini and KS archives

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