RSであることを示す特徴が完璧な状態で保存されていたポルシェを甦らせる!

この記事は『6年の歳月をかけて希少なポルシェ911カレラRS ライトウェイトを甦らせる!』の続きです。

これほど多くのパーツ、特にエンジンとギアボックスがなくなっている理由は、おそらく別のクルマに移植されたからに違いない。従って、残っている部分が本当に自分の考えているクルマなのかどうかを慎重に吟味し、徹底的に確認する必要がある。


私は1996年から世界各地へ出向いて、ポルシェの貴重なレースカーやラリーカーの真贋についてクライアントに助言してきた。その中にはRSも多かった。身元確認が最もしやすいのは完全にオリジナルの状態で残っている場合だ。しかし、修復や再塗装を受けている場合、本物であることを証明するには歴史的な証拠や過去の写真が必要となる。そうした証拠が存在しないとしたら、そこで考えなければならないのは"なぜか"だ。
 
RSの価格が高騰する中、私は見事な贋作をいくつも目にしてきた。ほとんど完璧なものもあった。"ほとんど"というのは、小さなミスや証拠書類の不備から、購入を検討している人たちに思いとどまるよう助言せざるを得ないケースが多々あったからだ。詐欺師を手助けすることになるから本物と偽物の見分け方は説明しない。ただ、偽物は必ず見分けられるとだけ言っておこう。そのためなら私は世界中どこにでも喜んで行く。
 
過去に細心の注意を払って多くのクルマをレストアし、コンクールでも勝利を収めてきたので、不適切なボルトを見つけるのは職業病のようなものだ。投書が殺到する前に断っておくと、このクルマのスタンダードでないパーツはすべて承知の上である。レストアの目的はあくまで競技参加だったからだ。厳密にいえば製造時期と合わないパーツもある。例えばリアバンパーは、本来はクロームのオーバーライダーが付いたスチール製であるべきだし、ボンネットのバッジも現在はステッカーだが金属製が正しい。RSスポーツは"アイコン"だから、そうしたパーツが揃っていて当然と思うエンスージアストが多い。


 
このRSの身元確認は比較的容易だった。RSであることを示す特徴が完璧な状態で残っていたからだ。RSのボディシェルには隠れた場所にナンバリングがある。そのナンバーや、刻印されたシャシーナンバーに改ざんの形跡はなかった。
 
しかし、アルミニウムのシャシープレートはなくなっていたので、ポルシェに再交付を申請した。すべての証拠書類を提出し、塗装を剥離したところで、ポルシェから派遣されてきたジェフ・モイズの審査を受けた。その結果、シャシーナンバー9113601423であるとの認定を受けた。もちろん詳細な証拠写真が撮られた。
 
レストアが完成すると、サリー州ギルフォードのポルシェショールームにクルマを持ち込み、そこで初めて実際にプレートが取り付けられた。ポルシェがクルマの認定に非常に慎重になっているのも無理もない。シャシープレートの再交付が受けられるのは、疑問の余地なく本物だと認められたクルマだけだ。
 
フロントには過去に大きな衝撃を受けたことを示すダメージがあり、右側のリアフェンダーも修復を受けていた。それを除けば錆もなく、ボディシェルは極めてよい状態だった。オリジナルが残っていたのは、両側のリアフェンダーと片側のドア、透明のガラスすべて、初期型のボンネット(RSスポーツのみにあるステー用の穴が目印)、アルミニウムフレームのダックテールだ。溶接でつなぎ合わせたような場所もなかった。例外はシャシーの補強を目的にした箇所で、これは1970年代にベルギーのGTLというスペシャリストが行ったことがのちに判明した。


 
フロントは修理のためにそっくり交換されていた。別のクルマのフロントを移植したのだ。この手の修理は安上がりのレストアでも簡単にごまかせるので、そちらを選ぶレストアラーは多いだろう。しかし、私はきちんとやりたかった。それに、このクルマでヒストリックイベントを戦うつもりだったので、できる限り強度を上げたかった。幸い私は新古品のフロントインナーフェンダーを2個購入できる場所を知っていた。元のインナーフェンダーは、ファクトリーで溶接された箇所をドリルで削って慎重に取り外した。こうすれば新しいパーツを逆の手順で取り付けられる上、オリジナルとほとんど変わらない仕上がりになる。また、シャシーナンバーが記されたパネルは無傷で残る。


インナーフェンダーを取り外してみると・・・次回へ続く

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curatorsLabo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Mark Waring Photography: Antony Fraser

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