誰も無視はできない!美しいパープルを身にまとった希少なポルシェ911S

911の中でもロイヤルパープルは数が少ない。その上、右ハンドルの2.4リッター 911Sで、しかもスポルトマチックとなれば、希少性は桁違いだ。レストアしたテック9で、この"ロイヤル"ファミリーとお近づきになった。

このクルマを目にしたら誰も無視できないだろう。なにしろ紫の911だ。シルバーやレッド、オレンジ、あるいはブラックのナローなら見慣れている。だが、紫である。しかも"これぞ紫"といいたくなる強烈な色だ。その名も「ロイヤルパープル」で、ファクトリーでは「フリーダー」(ドイツ語で「ライラック」の意)と呼ばれていた。

希少なのは色だけではない。引く手あまたの1973年2.4リッター 911Sだ。自身で運転するならば兄貴分の1973年2.7リッター カレラRSを上回るという人もいる。「"ナナサンカレラ"は価格では最低でも2倍だから、それと比べれば2.4Sは格安といっても過言ではない。たとえ値札が半額でも、間違ってもクルマの魅力は半分ではないからだ」と。
 
めずらしいパープルの2.4S、それも見事なレストアを受けた1台なら、それだけで取り上げる価値がある。だが、まだあるのだ。この希少な色の1973年2.4S(しかも右ハンドル)は、スポルトマチック仕様なのである。つまり最初のオーナーは、はるかに一般的だったマニュアルではなく、ポルシェのセミオートマチック・トランスミッションを選んだのだ。強烈なサウンドの燃料噴射式フラットシックスを、クラッチのない2ペダルでドライブしようとは、何ともこ大胆ではないか。
 
リバプール近郊のヘイルでポルシェスペシャリストのテック9を経営するフィル・ヒンドリーは、この貴重なクルマが2012年12月に売りに出されるとすぐに動いた。「私たちはこのポルシェを二人目のオーナーから購入しました。ロンドンに住むハワードとリンディーのスプリンゲット夫妻です。彼らは1984年からずっと大切に所有してきて、素晴らしいコンディションを維持していました。ハワードが素敵な話をしてくれました。彼は1980年代に2.4Sのほかに2.7RSも所有していたのですが、RSは2.4Sほど楽しめなかったので売ってしまい、2.4Sだけ手元に残したのです。RSなら今頃いくらになっていただろうと私たちは笑い合いました。それでも彼は、この911Sを所有した楽しみはどんな大金も上回ると断言していました」
 
1980年代中頃に911Sは赤に塗り直された。その頃には1970年代のロイヤルパープルは"古くさい"とみなされて、色を変えるクルマが多かったのだ。テック9が入手したとき、赤のペイントは時間の経過にもかかわらず驚くほどよい状態で、問題といえば再塗装したドライバー側のドアがフェンダーの色に溶け込んでいない点だけだった。エンジンベイとトランク内は黒でペイントされていたが、何カ所かオリジナルのパープルが透けて見えており、重ね塗りをしたことは明らかだった。


 
テック9ではオリジナルの色に戻すことに決めた。今の時代、オリジナリティがすべてだ。ファンキーな色も再び人気が高まっている。地金の状態に戻してからカラーコード341「ロイヤルパープル」で塗装するため、ポルシェ公認のボディショップであるボルトンのロード&レース社に持ち込んだ。
 
まずは構造部の状態を確認するため、クルマを分解し、塗装を剥離した。するとボディシェルはすこぶるよい状態で、深刻な腐食もなかった。錆に弱いBピラー下の"キドニー・ボウル"やドアジャム、アウターシルなどもオリジナルのまま残っていた。ドアフレームはオリジナルのものを生かし、外側のドアスキンだけポルシェクラシックから純正の新品を取り寄せることにした。
 
このプロジェクトでは一貫してオリジナルのDNAを可能な限り残すことに重点が置かれた。クルマを目にした人が、新品同様のレストアというより、非常にいい状態で残っていたオリジナルだと思うようにしたのだ。


 
その一例をフィルが説明してくれた。「シルより下、つまりシャシーの外側の部分は、フロアに紫色のチッピングコートを施し、その上を黒でペイントしています。ポルシェでもそうしていました。シルトリムの下にのぞくシャシーの見た目をよくするためです。ボディが明るい色だとよく分かりますよ。黒のペイントは刷毛を使って手作業で塗っていました」

「この部分がずいぶん不揃いで雑に見えるクルマもあります。トランク内のシャシーナンバーの周辺や車体番号プレートの縁もそうです。あとで塗装したためにペイントがかかっていることもめずらしくありません。70年代の製造ラインの様子が目に見えるようじゃありませんか」
 

エンジンを完全分解し・・・次回へ続く

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Keith Seume Images:Courtesy of Tech 9

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