スポルトマチック再発見│ロイヤルパープルの2.4 カレラ 911Sをレストア

この記事は『誰も無視はできない!美しいパープルを身にまとった希少なポルシェ911S』の続きです。

エンジンは完全に分解し、消耗部品はすべて新品に交換した。あわせてピストンとシリンダーもオリジナルと同じマーレ製の新品に交換してリビルドすることになった。フィルが詳細を教えてくれた。「ポルシェは強度を上げたマグネシウム製クランクケースを開発しました。鋳造されている番号が"7R"で終わっているのが目印です。最初このケースはRSバージョン専用に確保されていましたが、1973年の生産が進むと、他のモデルにも拡大されました」


「このクルマは1973年後期に製造されたので7Rケースが使われています。2.4の7Rケースは、マグネシウム製ケースの中でも最も強度が高いと広く認められています。それはシリンダーのボア開口部が小さいからです。対して2.7リッターでは、各シリンダーを削ってボアを5mm広げる必要があるので、構造的な強度は弱まります」

「メカニカルインジェクション用燃料ポンプは末尾の番号が013か021で、これも911S専用のパーツです。ポンプのボディの材質が1973年中頃にアルミニウム製に変わりました。それ以前はマグネシウム製です。2.7 RSモデルもポンプのボディは総アルミニウムで、こちらは末尾の番号が019です」
 
トランスミッションの話に移ろう。現在ではスポルトマチックとその仕組みになじみのない人も多い。同様のアイデアは1960年代初頭にフォルクスワーゲンでも使われていた。サキソマットという3段式ギアボックスで、簡単にいえばマニュアルギアボックスと遠心クラッチを組み合わせたものだ。


 
ポルシェのスポルトマチックは4段型トランスアクスルをベースにしており、その中身は通常の911の4段型マニュアルギアボックスと実質まったく同じだった。スポルトマチックのトランスミッションはタイプ905(901ギアボックスをベースにした初期型)と925(915ギアボックスがベース)がある。
 
コンセプト自体はサキソマットと似ているが、スポルトマチックでは遠心クラッチの代わりに3種類のエレメントからなるトルクコンバーターを使い、駆動力が漸進的に伝達される。これと組み合わされるのは通常の乾式クラッチで、ドライバーがシフトチェンジするたびに真空サーボでクラッチが作動する。トルクコンバーターはフィヒテル&ザックスがポルシェのために製造したもので、通常のフライホイールの役目はトルクコンバーターが担う。
 
トルクコンバーターは、その名の通り、低回転域でエンジンのトルクを増幅する。さらに回転が落ちると"ストール"(事実上のロックアップ)し、その際のトルク比は、フィヒテル&ザックス製ユニットの場合2.15:1で、ストール回転数は2600rpmだ。トルクコンバーターのおかげで、どのギアからでも発進できる。



ストール回転数より低回転ではトルクコンバーターが"滑る"ので、完全なマニュアルギアボックスと乾式クラッチの場合と同じように、クラッチは徐々につながる。そのため、停止と発進を繰り返す市街地でも、まったく変速せずにフルATと同じ感覚で運転することも可能だ(もちろんパフォーマンスは大きく落ちるが)。
 
変速するには、シフトレバーを動かして望みのギアレシオを選ぶだけでいい。フィルはこう話す。「スポルトでのドライビングはシンプルです。覚えておくべき黄金律はひとつ。望みのギアに入れたらレバーから手を離すことです。レバーの中に組み込まれているマイクロスイッチで、電磁気とバキューム圧で動くソレノイドバルブが始動し、それがクラッチを動かすからです。バキューム、すなわち負圧はスロットルボディ内のポートから取り、それをためるタンクが、エンジンの上、パーセルシェルフの下にボルトで取り付けられています。面白いことに、スポルトマチックはスイッチが入ったり作動したりしても目立った音は立てません」
 
925/01は911S 専用のギアボックスだ。ポルシェはエンジンのパフォーマンス特性を最大限に生かすため、完璧なギア比と組み合わせたのだろう。


ギアチェンジの操作は?・・次回へ続く

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Keith Seume Images:Courtesy of Tech 9

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