ラリーはハプニングだらけ!│クラシックポルシェでサファリ・ラリーへ挑戦

この記事は『アフリカの大地を9日間駆け抜けるサファリラリー│クラシックポルシェを扱うタットヒル・ポルシェへ』の続きです。

しかし、これほどまでに周到に用意をしていてもなお、備品の需要に追い付かないことがあったという。「今年は、メインコントロールアームで大きな不足がおきました。4日目までに、右フロントのTCAに割り当てられた60%を消費してしまったのです。あちこちから同じ問い合わせが殺到してしまいました。ある年には、ギアボックスの中身が空になってしまったこともありますしね」

そう控えめに語るタットヒル・ポルシェのCEOであるリチャードの性格こそが、困難な状況下の現場に落ち着きを与える存在であると言える。しかし、あの915型エンジンを、茂みの中でリビルドすることは本当に可能なのだろうか?

「やるしかないんですよ」とリチャードは簡単に言ってのけた。「2017年には、スティグ・ブロンクビスト氏がエンジントラブルを起こしました。誰だってエンジントラブルは嫌ですよ。しかし、その年わたしたちはわずか13分で全てを交換して見せました。そのために、わたし自身新しいエンジンを手に入れるために夜通し6時間運転しましたよ」その日リチャードは朝方3時か4時に現場に戻ったが、その時にはもう壊れたエンジンとギアボックスは外されていた。



「スティグ氏はパルクフェルメから車両を押し出し、15名から20名のメカニックが修理に取り掛かりました。2位だった車両にそのままスティグ氏は乗り込み、そのままパルクフェルメを後にしたのです。走り出してから次の区間まで、およそ12㎞もの距離がありましたから、前を走る車両たちは恐らく『彼はもう終わりだ』と思ったことでしょう。しかし、その車たちを彼は颯爽と追い抜いて見せたのです」こういった出来事が、彼をレースから離れなくさせているのだと、リチャード氏は嬉しそうに語った。

30年以上もレースで泥だらけになっていた彼らには、古い911ほど魅力的なものはないのだという。「エンジンは適切な位置にあり、トラクションも強力です。3.0リッター フラット6は、トルクも太い。独立したサスペンションは、思い描く理想のコーナリングを実現しますし、これが1973年に完璧に作られていたのです。現在、5基のエンジンが手元にありますが、全てオリジナルのクランク、ケース、ヘッドが付いています。わたしたち自身の開発自体も、ポルシェの歴史を無視するということは、大きな過ちを犯してしまうということを、わたしたちは知っているのです」

イギリスの肌寒い朝に、ラリーを戦い抜いた車両たちの状態を見るに、オリジナルのデザインと、現在の技術がそれぞれの役割を果たしてきたというのは明らかだった。「車両は、アフリカから破損したまま戻ってきたと誤解されています。もちろん、走行中になにかにヒットして戻ってくることはあります。レースですから。また、誰とは言いませんが、何人かのドライバーはアフリカで大きなクラッシュをして帰ってきたことだってあります。しかし、適切な運転をすれば、新品同様で戻ってくることだって可能ですよ」とリチャードは笑った。

そして、確かに帰還した車両のほとんどが、エンジンのリビルドが行われないまま戻ってきていた。ポルシェのオリジナルデザインの技と、タットヒルの技術、事前準備の証明だろう。現地で行われるリペアサービスのほとんどが夜間で行われていることを考えると、タットヒル・ポルシェチームの技術がいかに精巧で、正しく行われていたかがわかるだろう。



リチャードは、この夜間作業について、「夜間作業の準備もしていますから。照明や懐中電灯はもちろん持っていますが、それでも、このチームがやりのけてしまうことに、驚きを隠せないことがあります。彼らはそこで3週間から6週間もの時間を過ごします。ラリーの最後には、わたしは彼らに言葉にならない感謝と、言いようのない感動を覚えるのです。彼らは素晴らしい。わたしは素晴らしいチームともに戦えて幸せです」と語った。

取材の間も、スタッフたちは黙々と車両を作業場へ押し戻している。「このラリーが2年に一度の開催であることは、私たちにとっても救いです。またラリーに挑戦したいと思うまでに、少なくとも半年から1年は気持ちの準備が必要ですからね」

クラシックポルシェ編集部

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