素材探しからスケジュールに狂いが!パワフルマシン ポルシェ934のレストア作業

この記事は『 どこまで「オリジナル」に沿うか・・・ポルシェ934のレストアで直面した問題』の続きです。

30台しか生産されなかった934のパーツ探しが困難を極めるであろうことは、当初から想定通りだった。とはいえ、レストアの世界は意外と充実していて、リビルト業者も様々存在している。しかし、まさかサスペンションやブレーキパーツでさえ、934に適合するものを探すことにこれほど苦労するとは思ってもみなかった。
 
例えば、フロントサスペンションのアームを発注しても、検品してみると耐久レースで使えるような品物ではないことがわかった。一般的に合金鋼が用いられているのだが、硬すぎるゆえに長時間のレースには不向きなのだ。ある程度の硬さを保持しながらも、柔軟性を伴う素材でなければならなかった。そうした素材探しからレストアのスケジュールに狂いが生じることになった。


レースマシンとしてレストアするためには、様々な部品を調達しなければならなかった。しかし、いざ部品が930用のパーツやリビルト品が届いてみると、耐久レースに耐えられるレベルのものではないことが発覚。多くの部品は、耐久レース参戦を念頭に素材を選び、オーダーメイドすることになった
 
ブレーキディスク、キャリパーの実装テストでも思いがけない問題に直面した。それはホイールの調達だった。オリジナルのBBS 製ホイールには鍛造マグネシウムが用いられていた。軽量化は実現できるが経年劣化には弱く、ヴィンテージホイールをレースに用いることは危険ですらある。こうした理由から高品質なアルミ合金製のレプリカを調達することになった。
 
グループ5仕様の934は、フロントに10.5J ×16、リアに14.5J×16というサイズを採用していた。ただ、1970年代のタイヤ技術は現代のものとは大きく異なる。現代のタイヤは、かつてのものと比べるとタイヤのエッジが効いているので、路面との接地面を最大限にするためにはネガティブキャンバーをつける必要がある。ホイールハウス内のクリアランスを確保するためにオリジナルホイールに比べて平均0.5インチ、ホイール幅を狭めることが無難という判断がくだされた。
 
ドアのインナーパネルには悩まされた。グループ4の934には930とまったく同じパワーウィンドウが使われていた。1120kgという重量制限があるために、手動ウィンドウにして軽量化する必要がなかったからだ。しかし、新しいFIAレギュレーションによりロールバーの溶接が義務付けられることになった。すると、オリジナルのドア・インナーパネルからパワーウィンドウを取り外さなければならず、雰囲気が変わってしまうことになる。当面はFIAレギュレーションを満たすドアのインナーパネルとプレキシグラス製ウィンドウを装着したが、オリジナルの雰囲気と変わらないドアのインナーパネルを新たに製作する必要が生じてしまった。細部まで気を配ったレストアをするには、何事も一筋縄にはいかない。


ウェイストゲートは2個装着されているが、これはエンジンのセッティングのため。セッティングが終了し次第、オリジナル同様、1個のみの装着となる。
 
934はパワフル過ぎて、当時の5段MTでは耐えられなかった。そこで用いられたのが4段MTだが、ギア比のセッティングはコースごとに違っていた。また、シングルターボゆえに、ドライバーによるアクセルペダル・コントロールもシビアだった。エンジン回転数を落とし過ぎるとターボラグでもたついたり、エンジン回転数が高すぎるとコーナー出口でトルクがあり過ぎたりもした。
 
レストア作業でバラバラにされた934だが、紆余曲折を経て再び"クルマ"として組み上げられた。真新しいターコイズブルーのペイントが施され、車内に張り巡らされたロールケージもレースマシンらしさを強調している。しかし、作業はまだ終わりではない。見た目のリフレッシュが重要なのではなく、あくまでもル・マンクラシックに参戦するレースマシンとして仕上げなければならなかったからだ。


手探りでトライ&エラー!<次回へ続く>

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:Paolo Faldini Images:Kremer, Porsche Archives and PF

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