日本でも世界でも。すべてのポルシェが走り続けてゆくために 世界基準の"ポルシェクラシック"

ポルシェAGが長年培ってきた技術や知識、約5万2000種類以上の純正パーツによって、クラシックモデルのレストア&メンテナンスを行う部門が「ポルシェクラシック」。そのサービス拠点である「ポルシェクラシックパートナー」は各国で展開しており、日本にも4拠点が存在する。ポルシェが掲げる〝伝統と革新〞を担うその取り組みを紹介する。

ドイツ、シュトゥットガルト郊外、ツッフェンハウゼンにあるポルシェ本社工場に隣接するポルシェミュージアムは、コンセプトとして"ローリング・ミュージアム"であることを掲げている。約400台に及ぶ所有車両のほとんどが自走可能であり、レースやイベントにもよく参加するため、定期的に展示車両が入れ替わっていく。ミュージアムそのものが"走り続けていく"ことを意味している。それを長年支えてきたのが、ポルシェ社内にあるレストレーション・センターだった。
 
そうして長年培ってきたノウハウを活用し、およそ5年前にドイツ本国で自社の所有車両だけでなく、一般顧客の所有するクラシック車両のサービスを請け負う部門「ポルシェクラシック」が立ち上がった。ここでいうクラシック車両とは、生産が終了して10年以上が経過したモデルのこと。356や歴代の911、924、944、968、928をはじめ、最近のモデルとしてタイプ996の911やタイプ986の初代ボクスターなども対象となる。ポルシェクラシックの主たる業務は、ポルシェ車両のコンディションを維持すること。そのために約5万2000種類以上のクラシックモデルの純正パーツを製造し供給する。またポルシェクラシックでは、現代のタイヤをクラシックモデルに履かせてテストを行い適合リストを作成。オイルに関しては現代の低粘度な100%化学合成油がクラシックモデルに適さないことから、空冷水平対向エンジンに対応する新たなオイルをドイツのメーカーと共同開発する徹底ぶりだ。


 
それらを収めた純正パーツカタログである『ORIGINALE』は、部品検索ができるだけでなく、開発秘話や技術へのこだわりなどが紹介されており、読み物としても楽しめるもの。日本語版も第2号が発売されており、ポルシェオーナーでなくても購入する人がいるほどだ。ポルシェクラシックでは、"すべてのポルシェがオリジナルのポルシェであり続ける"ことを目標としており、パーツカタログをそのように名付けたという。
 
さらにポルシェクラシックは、そうしたサービスを本国だけでなく、世界中で受けられるようにとクラシックカー専用の展示スペースをはじめ、専門のトレーニングを受けたメカニック、メンテナンス設備を備えたクラシック専門のサービス拠点「ポルシェクラシックパートナー」の開発を進めている。


 
2015年3月、ポルシェセンター青山 世田谷認定中古車センターが日本初のポルシェクラシックパートナーとしてポルシェAGより認定された。そして現在、ポルシェセンター名古屋、ポルシェセンター横浜青葉認定中古車センター、ポルシェセンター堺と日本には4つのポルシェクラシックパートナーが存在する。ポルシェジャパンアフターセールス部マネージャーの入江健次氏は、「ポルシェはこれまでも、生産された車両の約7割がいまも世界のどこかの国で所有され、走っていると公言していますが、日本においても同様に、いつまでもその状況を維持し続けていくことがひとつの目標です。日本はクラシックに関しては世界的にみて5番目の市場です。いまは多少落ち着いていますが、空冷モデルを筆頭に中古車相場の高騰によって、日本のクラシックモデルが欧州などに流出してしまいました。日本にはメンテナンス履歴がしっかりと残った保管状態のいい車両がとても多くあります。できることならば国内で大事に乗ってくださる方に引き継いでいただいて、ポルシェだけでなく、クラシックカー全体が日本に"文化"として根付いていって欲しいと思っています」と話した。
 
ポルシェはいつの時代も伝統を重んじる一方で、常に革新的であった。電動化の時代が訪れようとも"伝統と革新"の両輪で、走り続けていく。

文:藤野太一 Words:Taichi FUJINO

RECOMMENDED