世界のマエストロ カラヤンと世界王者 ヴァルター・ロールの知られざる交友関係

モータースポーツ史の中で最も傑出したラリードライバーだといわれるヴァルター・ロールは、プロとして活躍した1973年から87年までに2度(1980/1984 年)FIA 世界ラリー選手権王者に輝いている。さらに、世界選手権では通算14度の優勝を記録し、モンテカルロ・ラリーは4度も制覇している。ロールの最初のクルマは21歳の時に購入したポルシェ 356だそうだ。そんな彼の回顧録をご紹介。

「クルマをこよなく愛していた世界的指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤン。この世界のマエストロが、私に会いたいと Dr.フェルディナンド・ピエヒを通して連絡してきたのです。私は彼が住むザルツブルグ郊外のアニフへ向かいました。カラヤンが、“どうして私があなたとドライブしたいのかご存知ですか?”と聞いてきたので、“私たちが同じスポーツカーを所有していること、そしてあなたが Dr.フェルディナント・ピエヒをご存知だったので私と連絡が取れた、ためではないでしょうか?”と答えました。

そうすると、彼はこう答えました。“そうではありません。私がスワンという高級ブランドのセーリングヨットを所有しているのをご存知ですか?そして、プライベート・ジェットとしてセグメント最高級のツイン・エンジン仕様のファルコンを所有しています。私は常に最高を求めているのです。ですから今回あなたとドライブに出かけるのです”。こうした経緯で私たちはアニフを出発して、テンネン山脈に聳えるハラインへと向かいました。

ドライブの途中で突然カラヤンが、“ビデオで拝見したのですが、あなたは左足でブレー キを踏んでいますよね?ぜひ教えてください”というのです。“マシンを物理的限界域で走行するときに、必要に応じて左足でブレーキをかけます”と答えました。するとカラヤンは、“ここは対向車がほとんど来ないので、スピードを出しても平気ですよ。私が安全確認しますから”というのです。

左カーブに差しかかるとカラヤンの上半身はダッシュボードを乗り越え、フロントガラスにぶつかりそうになっていましたよ。それでも、“大丈夫、大丈夫!”と声を張り上げていました。別れ際に、“先ほどのブレーキングを練習して、それからもう一度貴方に連絡しますね”と私との再会を約束してくれて、それからの2年間は何度も一緒にドライブに出かけました。ドライブ中のカラヤンの顔はいつもとても幸せそうで、“あなたのためならいつでもコンサートのチケットを用意しておきます。プライベート・ジェットもありますからね”と嬉しい誘いも受けていました。しかし、当時の私はスケジュールが完全に埋まっており、結局そのお誘いを受けることができなかったのです」

クラシックポルシェ編集部

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