ヒーローの再生│納屋に眠っていたポルシェ930ターボとの出会い

エンジン・ビルダーとの不幸な出会いのせいで、この1979年式930ターボはまるでガレージの埃まみれの看板のように10年以上も見捨てられていた。しかしながら、ナインマイスターの見識と最新技術によって、モータースポーツの血統を持つモンスターは新車当時以上の状態に見事に蘇った。

自動車における最も重要な革新的技術のいくつかはモータースポーツの競争の中から生まれた。性能面だけでなく、信頼性や燃費についても、プロフェッショナル・レーシングの現場で初めて実用化されたものは多い。自動車メーカーは機会ある度にレーシングカーとロードカーの血縁関係を主張してきたが、そんな関係がポルシェ930ターボほど明確なものはほとんどない。


このクルマは当時、いや現在でも911シリーズのターニングポイントとして半ば崇拝の対象となっている。獰猛そのものの934および935レースカーの開発プログラムから生まれ落ちた"ターボ"は、大きく向上したパフォーマンスと激しく噴出するパワーで羨望とともに畏怖の対象となり、デビュー直後からアドレナリンを放出させるロードゴーイング・モンスターとして、世の中のエンスージアストに強烈な印象を残したのである。
 
英国ウォリントンに本拠を構えるポルシェ専門ワークショップであるナインマイスターの代表、コリン・ベルトンにとっても、930ターボは特別なモデルであり、現在進行形のテーマでもある。1990年代はじめからサーキットでの走行を考慮した高性能ポルシェを製作してきた彼にとって、この930ターボこそがポルシェに興味を抱くきっかけとなったクルマであり、結局その衝撃が現在の仕事に続いているからだ。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Alex Grant Photography:Andy Tipping

RECOMMENDED

RELATED

RANKING