モータースポーツの世界へと見る人を引き込むアート作品

イギリスに住むアーティスト、ティム・レイゼルがアクリル画で描くモータースポーツの世界はスピード感溢れ、見る者をレースへと引き込んでいく。

キャンバスに筆を最初を入れる時、「自分がイメージするような一枚を描けるだろうか?」という不安が今でもよぎるのだとレイゼルはいう。「なかなか思い通りに描けない時期もありましたからね。でも今はスランプから抜け出しました」。

レイゼルが絵に興味を持ち始めたのは3歳の頃。幼児の頃から、両親に連れられてクラシックカーのイベントに出かける環境で育った彼は、気がつけば机に向かってレーシングカーの絵を描いていたという。そして13歳の時、応募資格が23歳以下の才能発掘オーディションに作品を出し、最優秀賞を受賞したのだ。その時点で、叔父が所有していたポルシェ 911 カレラ 2をモチーフにした作品をすでに何点か販売していたという。

レイゼルは大学へ進学せず、自動車のデザインに情熱を注いでいった。「絵描きは僕の天職ですよ」と彼は嬉しそうに話す。彼は田園風景を眺めながら瞑想に耽り、インスピレーションを受けるようなタイプのアーティストではない。キャンバスの後ろにはテレビが置いてあり、普段はスポーツ中継や映画を観ている。一方で創作活動中は驚くべき集中力を発揮し、素早く作品を仕上げていくのである。モチーフによってはリサーチそのものに時間がかかり、数カ月を要することもあるそうだ。伝説のレーシングカーやドライバー、記憶に残るモータースポーツのワンシーンをモチーフに毎年15枚ほどの作品を完成させる。「昔の写真はほとんどが白黒なので、色を調べる過程がおもしろいですね。レース中のマシンのポジションなど、ディテールにはこだわりたいので、どうしても時間がかかります」。彼の作品の3分の2はクライアントからの依頼で、最近は仕事が増えたため絵のリサーチは兄弟が手伝っている。

レイゼルの独特な作風は、リアリズムともポップアートとも見ることができる。躍動感を強調するテクニックなのだろうか、マシンは斜めに切り取られ、ドライバーの頭は傾いていることが多い。「斜めから光が差しているイラストを好む人が多いですね」。彼の絵はブルートーンのダークな色合いをベースに、ハイライトを加えながらコントラストを出していく。

あまり見ないこの手法こそが、彼の作品の秘密なのかもしれない。「男の子なら少年の頃、一度は自動車の絵を描いた経験があると思います。子供の頃に好きだったクルマの絵を今でも描き続けられることに幸せを感じています。自分がドライバーとしてもっと多くのレースに参戦できたらいいのに、と思うことはありますけどね」。

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