関係者が語るル・マン24時間での武勇伝│仮眠中のワークスドライバーを起こしに行くと・・・

24時間は 86400秒。しかし、“ル・マン24時間”という場ではそれ以上の何かを感じることができる。忘れることのない、歴史的な瞬間が起こるのだ。小さなエピソードから大きなサクセスストーリーまで、十人十色、喜びや悲しみの感情が24時間の中で交錯する。ル・マン 24 時間が開催される時は、いつの時代もレースに魅了された観客一人一人の情熱がひとつとなり、会場を包み込む。そんな瞬間を間近で見て、感じてきた関係者が語るル・マン24時間での武勇伝をご紹介。

・マンフレート・ ヤントケ ポルシェのモータースポーツ 元レース主任
「サルト地方の時の流れは、いつもはとても穏やかです。そんな土地で一年に一度、世界最速と謳われるレースが行われるわけで、対照的でおもしろいですよ。マシンはスタートと同時に爆音を轟かせながらテンポを上げ、高まっていく危険とは裏腹に観衆のムードは最高潮に達するのです。そんな人間味あふれる豊かな経験を、この時代のドライバーたちは愛し、楽しんでいました。

当時、私はレース主任だったので、仮眠中のワークスドライバーをよく起こしに行ったものです。振り返ってみると、それは特別な瞬間でしたね。皆それぞれに個性豊かでしたが、身体能力が一番高かったのは明らかにヨッヘン・マスでした。彼が疲労困憊している表情を見たことがなく、24時間のレース中でもほとんど仮眠を必要としていない感じでした。ジャッキー・イクスは、起こした瞬間すでにレースモードに切り替わっていましたね。中には仮眠後に自分の役割を果たせないほど疲れ果てていたドライバーもいて、そんなドライバーを起こすのは一苦労でした。当時のマシンが放つサウンドは相当の音量でしたから、まさにアブラハムの懐から地獄のマシンへ飛び乗るような状態だったのでしょうね」

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