ポルシェの黄金時代を記録するため復活したポルシェ917のヒストリー

この記事は『「必ずや注目を集めるデザイン」と記された│ポルシェ917のお披露目』の続きです。

917-001は一度もレースに使用されたことはない。その代わりにジュネーヴの後もショーカーとして忙しい日々を送った。1969年9月のフランクフルト・ショーには、白と緑から、鮮やかなオレンジと白のボディカラーに塗り直されて登場、さらに同じく9月に開催されたアールズコートでのロンドン・モーターショーには、ポルシェとJWオートモーティブ・エンジニアリングの提携を強調すべく、あのガルフカラーで姿を現した。



この001号車が最後に公の場に展示されたのは、ル・マン郊外のシャトーにポルシェのヒストリック・レースカーを集めたイベントの場だったが、偶然にもそれは1970年のル・マン24時間レースと同時期に行われたものだった。
 
その年にポルシェがル・マンで初めての総合優勝を獲得したことを知らない読者はいないだろう。ポルシェ・ザルツブルグの斬新な赤/白カラーをまとったショートテールタイプの917-023は、リチャード・アトウッドとハンス・ヘル・マンの2人によって、史上最も過酷だったレースを制した。他の917の完走率は低かったが、それは問題ではなかった。ポルシェはとうとう世界一有名なレースを制したのである。


 
この勝利を記念するために、ポルシェ・ミュージアムに一台を収めることになり、917-001がその栄誉を受けることになった。001 号車はリアセクションを取り外してショートテール仕様に改造され、ル・マン優勝車のカラーリングに塗り直されて、世界中の様々なイベントで展示され、そうでない時はポルシェ・ミュージアムの主役としてその後の37年間を過ごしてきた。 

そのまま長く幸せな引退生活を送ると思われていたが、そうはならなかった。2019年が917の50周年であることに気づいた人々によってまたも白羽の矢を立てられた001は、2018年1月にミュージアムから運び出され、オリジナルの仕様に戻すためのチェックを受けることになった。リアのロングテール用フレームは新たに製作する必要があったが、ルーフやウィンドスクリーン、ドアやサイドウィンドー、ドアフレームなどボディワークの大部分は予想以上にオリジナルのままで、この車独特のサイドエグゾーストと2基の燃料タンクも元々の状態を維持していたという。


 
新たに必要なボディパネルは、オリジナルの図面を参考にしながら現代のCAD技術を使って、50年前と同じ素材を使って製作された。リアサスペンションとリンクしているユニークな可変フラップもオリジナルと同じように作られた。アドバイスのために招かれたハンス・メツガーは、「これほど有能な人々がこの計画に携わっていることに感動した」と語ったという。鮮やかにレストアされた917の「発表会」はヴァイザッハで行われ、撮影のためにワークスドライバーのマーク・リーブが実際に走行を披露、その場には誰よりも長く917-001のテスト走行を担当したクルト・アーレンスを含め、当時の開発チームメンバーの多くも集まり、最初の姿に戻された001を見守ったという。ヴァイザッハでのデビューの後は、シュトゥットガルトの「レトロクラシック」で初めて一般公開され、さらにグッドウッド・メンバーズミーティングでレストア後初めてサーキット走行する雄姿を披露した。
 
プロトタイプからテストカー、さらにミュージアムの展示車を経て最初の姿に再び戻った917-001は、勝利を取り戻すためではなく、1970年代のポルシェの耐久レースの黄金時代を永遠に記録するために復活したのである。

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