原点を見つめること│クラシック・ポルシェの在り方

グループ・エムを牽引する生越 守氏は、クラシック・ポルシェと共に生きてきた。改造車と括られる国産車チューニング黎明期に育ち、そのノウハウをポルシェへ活かしてきた男の生き方を象徴するような愛車に焦点を当てクラシック・ポルシェへの想いを探る。

原点を見つめること。到達点を設定すること。国産車チューニング黎明期からの体験談を祖として、クラシック・ポルシェにまつわる豊富な知識と経験を持つ彼の考え方を整理するには、この言葉をまず頭に叩き込んだほうがいい。
 
グループ・エムの代表を務める生越 守氏のもとには、彼の考え方に共感し技術に惚れ込んだオーナーの愛車が世界中から押し寄せる。アメリカ最大手のフィルターメーカーであるK&Nのディストリビューターを務め、自らでもインテークシステムを中心としてアフターパーツを作り上げる同社は、同時にポルシェを中心とするヒストリックカーのレストアやチューニングを得意する。彼を指揮官として、作業のすべてを自社で賄う職人集団である。

 


「僕らが望んでいた構造が、当たりまえのように最初から備わっていた」と、彼は1970年代当時を振り返る。国産車に針の穴をつつくような改造をして、命がけでスロットルを踏み込んでどうにか到達する250km/hの世界を、純正のまま苦もなく披露する911を前に彼は感銘を受けた。以来、911を手に入れては己の哲学で改造に明け暮れた。公道からサーキットまですべての領域で「ポルシェを越えようとした」ことが、彼の血となり肉となった。「空冷911などクラシック・ポルシェの世界に入るのなら、まずはオリジナルを体感してほしい」
 
ポルシェを改造するなどもってのほか。という風潮が強かった時代に、散々後ろ指を刺されながら改造を続けた男にしては意外な言葉だ。いつも彼は、純正崇拝を否定も肯定もしない。クラシック・ポルシェといかに接し、どう手を加えてもいい。大切なのは座標軸の原点を知ること。ナローの新車の時代に、ほとんどの年式やグレードの乗り味を試し、そこに己のアイデアを投入してきた男の言葉ゆえの重みがある。だからこそなのか、彼の改造はどこにも無理がなく、常に一本の筋がある。
 
その筋において大切なのは「原点を掌握したうえで、自分なりのレギュレーションを設けて到達点を目指す」ことだった。数十年にわたって築き上げた技術を総動員して仕上げた、彼の愛車を見ればわかる。目の前にたたずむ2台のナローポルシェ。似たような姿形に思えるが、ベクトルは異なる。1台は1972年式の911Sをベースに、往年のカレラRSR 2.8をモチーフとしたもの。前後フェンダーをワークスカーと同寸に拡げ、あらゆる年式の部品を組み合わせつつ、自らで設計加工を加えて2.8ℓ化した。1トンをわずかに切る個体に300ps 近い出力性能を持つ。この軽さが現代では魅力的だ。

文:中三川 大地 Words:Daichi NAKAMIGAWA 写真:中島 仁菜 Photography:Nina NAKAJIMA 取材協力:Gruppe M 048-450-2911 www.gruppem.co.jp

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